2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J08976
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若林 大佑 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ケイ酸塩メルト / 状態方程式 / 静的圧縮 / 衝撃圧縮 / SiO2ガラス / 塑性変形 |
Research Abstract |
昨年度に上部マントル深部の圧力条件下で適用可能なケイ酸塩メルトの状態方程式に関する論文をまとめる過程で、大型プレスを用いた静的圧縮による測定と衝撃圧縮による測定では、ケイ酸塩メルトの密度の報告値に系統的な食い違いがあることが判明した。この不整合の原因を解明するために、静的および動的圧縮の専門家と議論を重ねながら、それぞれの測定データについて精査した。その結果、動的圧縮データにおける温度見積もりが、文献によって大きく食い違っていることが判明した。ケイ酸塩メルトの構造変化が相転移的であることを仮定して見積もった温度は、それらの見積もりの中間的な値を示す。リキダス温度を下回っていると推定されるデータも多く、試料の変質などの可能性がある。さらに、最近になって再解析の結果が報告された動的圧縮データには、元々のデータと大きく異なるものがあり、状態方程式の詳細な議論には精度が十分でない可能性がある。これらの内容については、学術会議において発表を行うとともに、論文としてまとめて発表した。 構造が緩和した状態にあるケイ酸塩ガラスは、メルトの構造や密度を良く反映していると考えられる。そこで、高圧下でアニールされたケイ酸塩ガラスの密度測定を目指して、炭酸ガスレーザーによる加熱系の立ち上げを進めた。その予備実験の過程で、昨年度に立ち上げたダイヤモンドアンビルセルの試料室へ液化ガスを充填するための装置を用いて、SiO2ガラスをArガス圧力媒体中に封入して加圧したところ、脆性物質であるにも関わらず、室温においても大きく塑性変形することが明らかになった。このSiO2ガラスの流動性に関する知見は、ケイ酸塩メルトの地球内部における粘性の圧力変化を考察する上で重要な意味を持つと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において重要な課題の一つとして昨年度より取り組んでいた、密度測定における静的圧縮データと動的圧縮データの系統的な食い違いの原因に関する考察を論文として発表することができた。炭酸ガスレーザーによる加熱系の立ち上げに関しては遅れているが、その予備実験の過程で、SiO2ガラスの流動性に関して極めて興味探く、地球科学的にも重要な結果を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に発表したケイ酸塩メルトの状態方程式モデルを実験的に裏付けるために、各圧力条件下でアニールしたケイ酸塩ガラスの密度測定に向けた取り組みを行っている。また、その過程で、SiO2ガラスが室温においても一軸圧縮により大きく塑性変形することが判明した。ケイ酸塩メルトの粘性の圧力変化とも密接に関係する重要な結果と位置付けて、現在論文としてまとめて発表する準備を進めている。実験と並行して、ケイ酸塩メルトの密度と粘性に関して得られた知見を元にした地球科学的考察にも力を入れていく。
|
Research Products
(5 results)