2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J08983
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 政樹 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 知識人 / 文学史 / 社会主義 / マルクス主義 / 概念史 / メディア |
Research Abstract |
当該年度では、戦前から戦後に至る、知識人論と文学史の関連を考察した。 その結果として、「知識人」「知識階級」「インテリゲンツィア」概念と、文学史の歴史について、新しい知見を得ることができた。 まず、「知識階級」概念が、明治期の初期社会主義運動やロシア文学の受容に際して使用されていることを確認し、それが、階級論や文学者像に関わって、重要な意味を持っていたことが明らかとなった。このことについては、有島武郎研究会第52回全国大会(2012年12月)で口頭発表を行なった。また、これをもとに執筆した論文は、『有島武郎研究』第16号(2013年6月刊行予定)に掲載が決定している。 さらに、「インテリゲンツィア」論が、昭和初年代において、プロレタリア文学理論の重要な問題であることを、平野謙の文学史論を中心とした研究によって、明らかにした。このことについては、日本文学協会第32回研究発表(2012年7月)で口頭発表を行なった。 また、戦後の文芸メディアにおける「インテリゲンツィア」論については、戦後の平野謙の文芸時評、文学史を対象に、調査・分析を進めた。この成果の一部については、今後、日本近代文学会2013年度春季大会(2013年5月)において、発表する予定である。 以上の研究の進展によって、近代日本の知識人論と文学史の歴史が、明治期から戦後にかけて重要な思想潮流となっていたことが、明らかとなった。また、概念史という視座からみることによって、知識人概念が、日本の社会主義、マルクス主義において、先鋭的な問題を孕んでいたことが、明確となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査したところ、当初予定していなかった資料が発見できたため。また、その資料が、その他の知識人論を考察するうえでも重要なものであったため。 予定通り、近代日本の知識人論と文学史についての調査・研究を継続していくことが重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
そのためには、複数の領域における先行研究を整理し、理解する必要がある。特に、日本近代文学における文芸批評の研究、初期社会主義・マルクス主義の研究、知識人に関わる比較文化研究の達成をふまえ、本研究が持つ意義を明確にしていくことで、研究計画はより一層順調に進展していくと考えられる。
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Research Products
(3 results)