2012 Fiscal Year Annual Research Report
非晶質炭酸カルシウムの含水量制御および含水量と物性・圧力応答との関係
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12J08988
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸山 浩司 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非晶質炭酸カルシウム / 結晶多形 / 圧力誘起 / 結晶化 / 構造解析 |
Research Abstract |
2012年度は、真空処理をすることによって含水量の異なる非晶質炭酸カルシウム(ACC)を合成し、加圧実験を行った。また、X線回折(XRD)測定による多形の同定に加え、加圧試料の電子顕微鏡観察(SEM)、および水の挙動を調べるために、熱分析を行った。SEM像観察により、結晶が放射状に成長していることが分かり、ACCから放出された水が圧媒体の働きをした静水圧的な条件下で結晶化していることが示唆された。また熱分析の結果から、ACCには結合の強さが異なる2種類の水が含まれており、真空処理では結合の弱い水が抜けやすく、また圧力誘起結晶化にも結合の弱い水が大きく影響していることが分かった。さらに、加圧前後で結合の強い水の振る舞いも変化していることが分かり、今後は加圧による構造変化と比較することで圧力誘起結晶化のより詳しいメカニズム解明を試みる。 また、圧力誘起結晶化により生ずる炭酸カルシウムの準安定相ファーテライトの圧力応答を調べるために、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた加圧実験を行った。XRDおよびラマン分光法を用いることで結晶構造の変化を評価した。その結果、ファーテライトは5GPa以上の圧力で未知の高圧相およびカルサイト高圧相へ相転移することが分かった。この結果は1GPa以下で起こるACCの圧力誘起相転移では、ファーテライトからカルサイトへの相転移は起こらず、ACCからそれぞれの結晶相へ直接結晶化するというプロセスを示唆している。 さらに、放射光を用いたACCのXRD測定の予備実験を行った。この結果をPDF(Pair distribution function)解析することでACCの短・中距離構造を明らかにすることができ、含水量の異なるACCによる構造の差異を議論できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱分析を用いることにより、含水量の異なるACCおよび加圧前後のACC中の水の結合状態から、ACCの構造や圧力応答に対して新たな見解が得られた。これらの結果は、今後行う予定である高圧実験や構造解析に一石投じることが期待される。また、ファーテライトの加圧実験により、これまで知られていなかったファーテライトの圧力応答を明らかにし、ACCの圧力誘起結晶化のプロセスを知るうえで重要な制約を与えることができた。 総じて自己評価すると、この1年間は今後の研究を進めていくための道具立てを揃えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ACCの圧力誘起結晶化のカイネティクスを調べていく。6-6式マルチアンビル装置を備えたPF-ARNE5Cでは、圧力下において短時間で測定できるエネルギー分散型XRD測定を行うことができるため、反応をリアルタイムに追うことが期待できる。また、ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧下その場観察も並行して行う予定である。 この際、0~5GPa程度の低い圧力領域を想定しているため、ダイヤモンドアンビルや圧媒体の最適化が必要である。 さらに、XRD測定のPDF解析およびEXAFSによりACCの構造解析を行うことで、ACCの含水量による物性・圧力応答の違いの解釈に、構造の面からアプローチをかけていく予定である。
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Research Products
(7 results)