2013 Fiscal Year Annual Research Report
非晶質炭酸カルシウムの含水量制御および含水量と物性・圧力応答との関係
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12J08988
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸山 浩司 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非晶質炭酸カルシウム / 圧力 / 結晶化 / カイネティクス / 構造解析 / 水 / ファーテライト / 相転移 |
Research Abstract |
2013年度は、合成した非晶質炭酸カルシウム(ACC)の高圧下その場観察を、6-6式マルチアンビル装置を備えた高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光実験施設(PF-AR NE5C)にて行った。半導体検出器を用いたエネルギー分散型X線回折(XRD)により、圧力下において10秒ごとのXRDパターンを得ることができ、ACCの圧力誘起結晶化が非常に速い反応であることが分かった。しかし、速度論的な解析をより詳細に行うためには、アンビルサイズを大きくし圧力を細かくコントロールするなどの改善点が挙げられ、さらに圧力マーカーの補正などが課題となり、2014年度の実験に向けて準備を進めている。 また、ACC中の結合の強さが異なる2種類の水がACCの構造にどのように取り込まれているかを調べるため、含水量の異なるACCで構造解析を行った。実験には、合成した含水量の異なるACCを用い、KEKの放射光実験施設(PF-AR NW10A)においてX線散乱パターンを測定した。得られた測定結果は、ブロードな回折ピークが観察され、ACCの構造は一般的な非晶質とは異なり、微結晶や潜晶質のように短・中距離秩序構造を持つランダムな構造であることが示唆された。得られた結果の動径分布関数(RDF)解析を行ったが、ACCは押し固めることができず試料体積を稼ぐことが難しいため強度が弱い、測定エネルギー領域で蛍光を発する元素がないためサポートとなる情報が得られないなどの理由から、解析が難航している。今後は測定・解析の改善を図り、ACCの含水量と構造の関係性の解明を試みる。 さらに、ACCの圧力誘起結晶化のメカニズム解明のサポートとして行った炭酸カルシウム準安定相のファーテライトの加圧実験により得られた結果をより詳細に解析し、新たな高圧相の存在が示唆された。この結果に関しては現在原著論文の投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CCの圧力誘起結晶化の高圧下XRD時分割測定には成功したが、より低い圧力のコントロールや圧力マーカーの見直しなどの改善点が挙げられ、カイネティクスを解明するまでには至っていない。また、ACCの構造解析に関しては放射光施設における測定を行うことができたが、解析が難航している。 総じて自己評価すると、研究計画通りの成果を挙げるまでには至らないが、様々な問題点・改善点を確認することができ、今後の研究を進めていくうえで重要な進展があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度の研究結果から挙げられた問題点・改善点を踏まえ、ACCの圧力誘起結晶化のカイネティクスを調べていく。より低圧をコントロールするためのアンビルの準備はすでにできているので, より正確な圧力を測定できるよう予備実験を行い、放射光施設での実験に臨む予定である。さらに、回収した試料を電子顕微鏡で観察することで、圧力誘起結晶化のメカニズムを結晶の形状からアプローチをかけていく。 また, ACCの構造解析に関してはより解析を進め、含水量による構造の違いからACCの物性・圧力応答を解釈していく予定である。
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Research Products
(5 results)