2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J08998
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 友一 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | episodic future thinking / 並列分散処理モデル / 記憶 / 目標 / 意味認知症 |
Research Abstract |
人間は, 自分の身に将来起こると思われる出来事について自己を投影し, その出来事を今まさに体験しているかのようにイメージすることができる。このような能力は, エピソード的未来思考(以下, 未来思考)と呼ばれる。これまでの未来思考研究から, 意味記憶の重要性が示唆されていたものの, それが如何にして未来思考に貢献しているのかは, 記述的にしか示されていなかった。本年度は, その問題に対して, 計算論モデルを用いた研究を実施した。そして, 意味認知症の未来思考をモデルによって再現することに成功した。その結果として, 未来思考能力の背景には系列的なイベント予測能力が存在することを新たに発見し, 意味記憶がイメージされるイベントの文脈維持に寄与しているということを確認した。 また, 未来思考は将来に備えることを可能にする能力であり, 人間が日常生活を営む上で欠かせない能力である。そこで, 実験室ではなく, より実際的な場面における未来思考と将来の目標との関連についても研究を実施した。具体的には, ある授業の受講者を参加者として, 実際に学期末に実施されるテストを目標として, 目標と未来のイメージの詳細さについて調査を行った。その結果, テストまでの時間的距離が「主観的に」近いと感じている場合にのみ, 重要性とイメージの詳細さに正の相関関係があることが明らかになった。また, 重要性が低い場合には, 詳細さがより低下するような変化が確認され, 重要でないものについては曖昧にしか考えられないことが明らかになった。このことは実際の距離を操作したとしてもそれを参加者がどう捉えるかによって十分な操作の効果が得られない可能性があることを意味している。したがって, この調査によって示された時間的距離感とイベントの重要性の交互作用的な関係は, 刺激選定や操作方法を決めるといった未来思考研究の課題設定を行う上でも, 非常に重要な知見を提供するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未来の出来事のイメージ構築のメカニズムの背景に系列予測能力が存在することと, 意味記憶が如何にして未来のイメージ構築に寄与しているのかを明らかにした。さらに, 主観的な時間的距離感とイメージの対象となる事象に対する重要性の認識が, イメージの詳細さという現象的側面に影響を及ぼすことを明らかにした。これらの発見はいずれも, イメージ構築のメカニズム解明に貢献するものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は, エピソード記憶検索とその情報の統合過程を中心に未来の出来事のイメージ構築メカニズムの解明を試みてきたが, 意味記憶システムも重要な役割を担っていることが明らかになってきた。特に平成25年度の研究成果から, 適切な未来のイメージ構築においては意味記憶情報が非常に重要であり, 意味記憶の障害が極めて重大な影響をイメージの構築に及ぼす可能性が示された。また, 計算論モデルを用いた研究が未来思考を可能とするメカニズムの解明にとって有効な手段であると期待されることから, このアプローチをさらに洗練, 発展させる形で研究を進める。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Neural correlates of suppressing learned reputations2013
Author(s)
Atsunobu Suzuki, Yuichi Ito, Sachiko Kiyama, Hiroki C. Tanabe, Hideki Ohira, Jun Kawaguchi, Mitsunobu Kunimi, & Toshiharu Nakai
Organizer
54th Annual Meeting of the Psychonomic Society
Place of Presentation
カナダ, オンタリオ州, トロント, シェラトンセンタートロントホテル
Year and Date
2013-11-15
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