2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J09014
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
中村 伊南沙 学習院大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 曲面結び目 / 曲面ブレイド / トーラス被覆結び目 |
Research Abstract |
論文[Unknotting the spun T^2-knot of a classical torus knot]が出版された。この論文では、1次元のトーラス結び目から構成されるスパントーラスの結び目解消数が1であるという事実の、図式を用いた簡明な別証明を与えた。任意の有向曲面結び目は、球面上のチャートというある種のグラフで表すことができることが知られている。まず上記の曲面結び目を表す球面上のチャート表示を求め、そのチャートにフリーエッジを加えるという1-ハンドル手術に対応する変形をしてから自明なチャートに変形するという方法によって示すことができた。 論文2本[Surface links with free abelian groups]、[Unknotting numbers and triple point cancelling numbers of torus-covering knots]をまとめ、投稿し、受理された。前者では、絡み目群がランク3または4の自由アーベル群になるトーラス被覆絡み目の例を挙げた。1次元の絡み目群が自由アーベル群であるならば、そのランクは2以下であることが知られているので、これは曲面絡み目特有の性質を表している。後者では、ある条件を満たすトーラス被覆結び目の結び目解消数と三重点解消数の上からの評価及び下からの評価を得た。上からの評価はトーラス被覆結び目を表すトーラス上のチャートを変形することによって得ることができた。下からの評価は2面体カンドルによる彩色と、カンドルコサイクル不変量の計算、およびM.Iwakiriによる結果を応用することによって得ることができた。特に、任意の正の整数nについて、結び目解消数がnであるトーラス被覆結び目の例と、結び目解消数と三重点解消数がどちらも2であるトーラス被覆結び目の例を挙げることができた。これまで具体例はあまり知られていなかったことを注記しておく。 曲面結び目のある種のサテライトの形をしている曲面結び目について考察した。このような曲面結び目は曲面図式上のチャートで表すことができる。同値な曲面結び目の曲面図式はローズマンムーブという局所変形によって関係づけられているが、チャート付きの曲面図式のローズマンムーブが定義できることを示した。これから論文にまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
論文1本が出版され、2本が受理された。当該年度の研究実施計画中にあった、トーラス被覆結び目の結び目解消数および三重点解消数の評価について、特に三重点解消数についての結果を得ることができた。国内の研究集会や国際会議で計8回研究発表した。平成26年度の研究計画の一部であった、曲面図式上のチャートとその局所変形について結果を得ることができた。また、研究内容や得られた成果等を社会に発信するため、ホームページを作成して公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画の一部を前倒しして、曲面図式上のチャートとその局所変形について結果を論文にまとめる。1次元の結び目やブレイド、3次元多様体、曲面結び目や曲面ブレイド、4次元多様体などについて、先行研究を学びつつ、本研究の研究対象であるトーラス被覆結び目の不変量について研究を進める。
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