2012 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ波顕微鏡を用いた局所複素伝導度測定による凝縮系素励起のダイナミクスの研究
Project/Area Number |
12J09038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 英幸 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 走査型マイクロ波顕微鏡 / 超伝導 / 磁束量子 / 磁束フロー / 鉄系超伝導体 / 表面インピーダンス |
Research Abstract |
1年目は室温・大気中で動作する走査型マイクロ波顕微鏡(Scanning Microwave Microscope、以下SMMと略す)を開発した。SMMでは、マイクロ波応答は試料-探針間距離に敏感に変化するため、空間分解能を上げるためにはその距離を一定に保つことが必須である。そのためにはトンネル電流などのフィードバックを同時に検出することが必要になる。これまで、マイクロ波・トンネル電流同時検出プローブとして同軸ケーブルを利用したものはいくつか報告があるが、本研究では、よりコンパクトな同軸共振器プローブを開発した。同軸共振器の中心導体を外壁から絶縁、かつ絶縁部を空洞内のエネルギー損失がなるべく生じないような位置に置くことで、トンネル電流とマイクロ波応答の同時検出を可能とした。将来的に低温環境で用いる場合、同軸ケーブルを利用したプローブよりも、熱的安定性に優れ、またコンパクトかつリジッドであることから、外部からの振動に対して強いことが期待される。特に後者は走査プローブ技術では重要である。 STMモードでの測定では、グラファイト表面のステップとテラスが観測できた。現在、STM像、Q値、共振周波数の同時スキャンをする測定プログラムを開発中であるので、マイクロ波応答の空間分解能についてはまだ明らかではないが、表面の凹凸に応じた共振の特性から推測すると、最低でも数十nm程度は達成できそうである。 また、本研究課題であるマイクロ波顕微鏡の開発と並行して従来のバルク測定手法(空洞共振器摂動法によるマイクロ波表面インピーダンス測定)を用いて超伝導磁束量子コアの電子のダイナミクスや、不均質な超伝導物質に関する研究を行った。具体的には、さまざまな鉄系超伝導体の磁束フロー抵抗を測定し、超伝導ギャップ構造やコア内電子状態によって多様な振舞いが現れることを発見した。鉄系超伝導体K_xFe_ySe_2の表面インピーダンス測定を行い、この系の相分離について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のものより、高感度な共振プローブを用いた、室温・大気中で動作する走査型マイクロ波顕微鏡を開発することに成功した。コンパクトかつ振動に強い設計という点は、低温環境を導入する際に有利と考えている
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Strategy for Future Research Activity |
共振周波数の同時スキャンをする測定プログラムを開発する。液体ヘリウム温度で動作するSMMを開発する。低温にすることで、共振器のQ値が高まり、マイクロ波応答の検出精度がさらにあがることが期待される。完成し次第、超伝導磁束量子コアの電子のダイナミクスや、不均質な超伝導物質の研究に用いる予定である。
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Research Products
(4 results)