2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J09043
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
西嶋 一泰 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 民族芸能 / 文化財 / 地域活性化 / 祭り / サークル / 民舞教育 / ヨソモノ / 観光 |
Research Abstract |
民俗芸能における外部の演者の役割について、主たるフィールドワーク地である青森県今別町の荒馬踊りについては継続的に現地調査を行なっている。外部の演者のサークルの人数の減少傾向とそれへの対応、北海道新幹線の「奥津軽駅」をめぐる地域振興策、SNSを通じた新たな関係等の要素が出てきており、地元の伝承者たちと外部の演者たちで緩やかに形成されるコミュニティがその新事象にどのように知恵を出し合い、対応しようとしているかを追っている。 荒馬踊りをメインの考察対象とするため、この芸能が持っている特徴を歴史的なアプローチでも読み解いていく作業もはじめた。津軽半島および北海道南部に分布する荒馬踊りおよび虫送り行事をめぐる芸能史的意味を江戸期に書かれた紀行文や弘前藩政史料などから考察する。虫送り行事とねぶた行事が各地で集合していくのは、「さなぶり」という田植え後の休みの無意味化とともに、2つの行事は村の境界をめぐるものだったということが挙げられるだろう。芸能の歴史的変化を考察しつつ、現在における変化に向き合いたい。 愛知県東栄町の御園の花祭りと、東京都東久留米市の東京花祭りについても、継続して調査を進めている。2012年に20周年を迎えた東京花祭りだが、東京の滝山団地の商店街のど真ん中で、火を焚き、釜をすえ、現地さながらの祭りを行なっている。地方と関係をもった都市の人びとの祭りが、「舞」を通じた交流から、「過疎化」や「信仰」の問題へと問題を共有していく様を継続的に聞き取りしていく。 また東京にて多くの外部の演者を生み出している東京民族舞踊教育研究会の活動にも注目する。学校教員が中心に、各地の民俗芸能の舞や唯子を習得する講習会を定期的に開催し、また地元の保存会との関係も多くつくっており、その機関誌と聞き取り、および例会への参加から、「民舞教育」の思想の変遷と、外部の演者と地元との関係のあり方について考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
民俗芸能における外部の演者、ヨソモノを研究対象にしていたため、東日本大震災後の民俗芸能への有形無形の支援活動についてもフォローアップする必要があり、また過疎高齢化が極端に進む地域と外部との関係性について震災後の枠組みで考え直す必要があった。牡鹿の獅子振り復活、雄勝の神輿の修復と担ぎ手支援、釜石での手づくりの民俗芸能祭等へのフィールドワークも含めたかたちで、民俗芸能の外部の関係を改めて考察していく。
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Strategy for Future Research Activity |
各地でのフィールドワークを論文化していく。荒馬踊りと外部の演者の関わりを論文化し『日本民俗学』に投稿する。また荒馬踊りと虫送り行事について芸能史的にまとめたものを『民俗芸能研究』に投稿する。東京民族舞踊教育研究会の1970年代から現在にいたる思想および活動の変遷と、伝承地域との接触と関係構築のありかたをまとめ、『日本民俗学』に投稿する。2014年3月に学位請求論文「民俗芸能における外部の演者の研究」を提出する。 東日本大震災における民俗芸能の支援活動にも現在何件か関わっており、これらのフィールドワークの成果も研究の論旨に組み込みたいが、被災地の状況はまだ見通しが建たないため、もう少し長いスパンで継続的に追いかけて論文化する必要がある。だが、「震災後」における外との関わりという視点は各論文に組み込んでいく。
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Research Products
(2 results)