2012 Fiscal Year Annual Research Report
衛星搭載能動型センサーを用いたタクラマカン砂漠におけるダストの氷晶核に関する研究
Project/Area Number |
12J09094
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
神 慶孝 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | エアロゾル / 氷晶核 / ライダー / 雲物理 / 雲レーダー |
Research Abstract |
本研究の目的は、タクラマカン砂漠で発生するダストが氷雲の形成・微物理・光学特性に与える影響を定量的に明らかにすることである。平成24年度で実施した研究の成果を以下に示す。 (1)雲中の氷粒子の割合とダスト出現率の推定 衛星CALIPSO、CloudSatを使用して全球における雲中の氷粒子の割合とダスト出現率を調べた。これにより、ダスト出現率が雲の相へ与える影響について地域別、温度別に調べる事ができる。 低温度域(0℃以下)におけるタクラマカン砂漠上空のダスト出現率は、他の乾燥地域と比べて最も高い値を示していた。これは、タクラマカン砂漠が高緯度帯(北緯35度以北)に存在し、同砂漠を起源とするダストが高く舞い上がっていることを意味している。さらに、-30℃以下の領域でもダストが観測されたことから、接触・凍結核だけでなく、昇華核や水滴・凍結核としても機能する可能性を示唆した。 雲中の氷粒子の割合を調べたところ、タクラマカン砂漠の上空では他の乾燥地域と比べて20%以上大きかった。このことから、氷晶核がより多く存在していることがわかった。ダスト出現率の結果と合わせると、タクラマカン砂漠起源のダストは他の乾燥地域起源のものと比べて氷晶核として機能し、-40℃以上の温度域の氷雲の形成に大きく寄与している可能性がある。 (2)エアゾロル層内における氷粒子の微物理特性の推定 ダストが氷雲の微物理に与える影響を定量的に調べるため、衛星CALIPS,CloudSatを用いて氷雲の粒子数濃度、有効半径を推定した。ライダだけでなく、雲レーダを用いると精度の高い微物理特性を計算することができる。その結果、ダストの濃度に比べて2桁オーダー小さい濃度の氷雲が形成されていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に計画していた解析について、大部分を着手することができた。また、現在執筆中の学術論文がまもなく投稿できる段階に達している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在執筆中の学術論文の受理を上半期中に目指す。さらに、もう一つの学術論文の執筆のための解析を進める。計画を遂行する上での問題点としては、予定していた現地観測が実行できない可能性が高いことである。現在、中国での気象観測が困難な政治情勢にあり、ライダーにラマン散乱検出器を追加することが難しい。その対応策として、国立環境研究所が展開しているライダーネットワークのデータを使って解析を進める予定である。
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Research Products
(7 results)