2013 Fiscal Year Annual Research Report
モンテカルロシミュレーションによるナノ構造内のフォノン輸送解析
Project/Area Number |
12J09161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 琢磨 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フォノン熱伝導 / 熱電変換材料 / ナノ構造 / モンテカルロ法 |
Research Abstract |
熱電変換素子は熱を電気エネルギーに直接変換することができる素子である. その変換効率は素材の熱伝導率が低いほど向上するので, これまで熱伝導率低減のためにナノ構造化の利用が主な手法として提案されている. 一例として, PbTeに対してSrTeナノ結晶を析出させることによって熱伝導率が大幅に低減され, 高い変換効率が実現されている. 一方で材料の最適化や性能の限界値の予測が今後のさらなる発展のために必要とされている. そこで本年度ではナノ結晶系が熱伝導率低減に及ぼす影響の解析を行った. 本年度の研究では, モンテカルロ法を用いたフォノンのボルツマン輸送のシミュレーションを行い, ナノ構造系でフォノンの界面散乱による熱伝導率の低減を定量的に予測した. パラメータとして必要なPbTeのフォノン輸送特性は第一原理計算によって得た. また, SrTeナノ結晶はPbTe結晶との界面において一切フォノンが透過しないとし, 熱伝導率が最も低くなる場合を求めた. 本シミュレーションによって, 実験で観察された熱伝導率はシミュレーションで予測された下限値に達しており, ナノ結晶は効率よく熱伝導率を低減していることがわかった. また, 周波数ごとの熱伝導率への寄与を求めたところ, ナノ結晶によってもっとも熱伝導率が低減されたケースでも高周波数の熱伝導率はあまり低減されていなかった. 以上のことから, 今後のさらなる熱伝導率の低減のためにはすでに熱伝導率に対し十分に作用しているナノ結晶の作成条件を最適化するよりも, 異原子を混合し高周波成分の寄与を減少させることが有効であるという示唆を定量的に得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の通り, モンテカルロ法を用いてナノスケールの空孔を有する熱電材料における熱伝導解析を行った. また, 成果が一通りまとまったので論文にまとめ査読付き英語雑誌に投稿し掲載された. これらのことは当初の研究計画に沿っており, 首尾よく進んでいる. 一方でインプットパラメータの最適化やプログラムの拡張性などに多くの今後の課題が残されている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後より現実的な系におけるシミュレーションの実現のため, 界面を有するナノ構造における解析を実際に行なう. 界面におけるフォノンの透過関数をどのように得るかが問題となるが, 非平行グリーン関数法を用いることが考えられる. また, 界面における現象は未知な点が多い点から, ボルツマン輸送方程式を用いて基礎的な観点からの解析も同時に行っていく予定である.
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Research Products
(13 results)