2012 Fiscal Year Annual Research Report
固体中電子の幾何学とスピン・電荷輸送現象の理論的研究
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12J09231
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中河西 翔 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | トポロジカル超伝導 / マヨラナ状態 |
Research Abstract |
固体中電子のトポロジカルな性質を理解するため, 超伝導を対象に研究を行った. トポロジカル超伝導においてはその端にマヨラナ状態と呼ばれる特異な状態が出現することが知られ, 近年実験においてその出現が確認されたことが注目を集めている. そこで重要になるのが強いスピン軌道相互作用および外部磁場であるが, 我々はそれらがない状況でトポロジカルな状態が実現すること, さらにそこではスピン相関を電気的に制御できることを示した. この研究成果はPhysical Review Letters誌で報告した. 2次元非従来型超伝導(p±ipペアリング)上の金属ナノワイヤを考慮し近接効果を用いて1次元超伝導状態を用意する. その有効理論から化学ポテンシャルを調節することでトポロジカル相が出現することを確認し, ワイヤ端に局在したマヨラナ状態が得られた. 系の時間反転対称性が保たれていることが本質的に重要であり, それによりクラマース縮退が保証される. 縮退した状態はスピン自由度を有しているとみなせるのでワイヤ端においてスピンを定義することができる(マヨラナイジングスピン). 系全体がメゾ系である状況を想定するとゲーティングによって系内の電子数を調節することが出来るが, 電子数の偶奇に応じてスピン状態と関係がつくことを見出した. これは電気的な制御によってスピン相関をコントロールできることを意味している. またスピンの時間発展を考慮することで両端のスピン状態を入れ替えるスワッピングに対応する操作を行えることも指摘した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来1量子ビットを試料の両端に引き離しその安定性を確保しようとしていたマヨラナ束縛状態の研究に、むしろそれぞれの試料端に2つのマヨラナ束縛状態を作って1量子ビットを形成し、量子もつれ状態を制御するという新しい考え方を導入したことは、同分野の研究に一石を投じたこととして高く評価出されると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究は基底状態に関する議論であり, 次の展開はダイナミクスと励起状態の物理が考えられる。特にパウリ排他効果を用いた量子情報の読み出し、近藤効果などに関係した輸送現象へのアプローチを今後は進める。
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Research Products
(7 results)