2012 Fiscal Year Annual Research Report
染色体の安定維持機構解明に挑む:親子・兄弟姉妹間で染色体数の異なるフナをモデルに
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12J09234
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 未来美 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | フナ / 倍数性変動 / マイクロサテライト分析 / フローサイトメトリー / 次世代シーケンサー |
Research Abstract |
(1)共同研究により、次世代シーケンサーを用いて大量のSTRマーカーを開発した。そこから42セットのマーカーを選び、3回のPCRと3回の電気泳動でこれら全42遺伝子座が分析可能なマルチプレックスPCR法を開発した。 (2)様々な系統・倍数性を含む75ペアの親魚を用いて行った予備交配実験により得られた大量のF1孵化仔魚について倍数性判別を行った。その結果、2nの雌親39個体のうち、28個体から生じたF1仔魚で、半数体、3n、4倍体(4n)、5倍体(5n)、モザイク個体、異数体などが確認された。 3nの雌親36個体が生じたF1仔魚の倍数性についてみると、22個体の雌親から様々な割合で半数体、2、4、5n、6倍体や、モザイク個体、異数体などが確認された。 (3)予備交配実験で得られたF1仔魚およそ1,000個体について、(1)で開発したマーカーを用いてSTR分析を行った。その結果、2n雌から生じた2n仔魚は、雌親と雄親それぞれに特有のアリルを1つずつ持つことがわかり、2n仔魚は通常の有性生殖により生じていると考えられた。一方、2n雌から生じた3n仔魚は、雌親に特有の2アリルと雄親に特有の1アリルを持ち、2n雌が減数分裂を経ない2n卵を生じ、それが精子と受精することにより生じると考えられた。3n雌から生じた3n仔魚は全て雌親のクローンであった一方で、3n雌から生じた4n F1仔魚は全て、雌親と同一の3アリルに加え、雄親に特有の1アリルを持っていた。これにより、これらの4nは、3n雌の生じた非還元3n卵が精子と受精することにより生じると考えられた。 以上の結果から、フナの2nと3nは、従来言われてきたような遺伝的にも生態的にも隔離された集団ではなく、フナの倍数性は繁殖を介して頻繁に変動していることや、その変動がどのように生じるかが初めて明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度目の研究計画として(1)次世代シーケンサーを用いた大量の新規マイクロサテライトマーカー開発、(2)予備交配実験で得られた標本の倍数性判別、(4)予備交配実験で得られた標本のF1仔魚標本のマイクロサテライト分析を挙げていたが、これら全てが実施でき、計画以上の成果が得られた。 とくに、新たに開発されたマーカーを用いて、大量の標本に基づいて行われたマイクロサテライト分析からは、フナで確認されている倍数性変動がどのように起こっているのかを知る上で適切で有用な結果が得られている。以上から、24年度の研究は順調に進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に行った研究で、本研究の目的を達成するために必要な情報が十分に収集でき、また、今後必要となる実験手法の確立ができた。今後は、これらを有効に活用し、交配実験およびマイクロサテライト分析を進め、フナの倍数性変動が起こるメカニズムのさらに詳細な解明に取り組んでいく。 とくに、予備交配実験では多くのデータが得られなかった、4倍体雌および4倍体雄を用いた交配実験を行い、これらにおける倍数性変動の有無・メカニズム解明を中心に行っていく計画である。
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Research Products
(1 results)