2013 Fiscal Year Annual Research Report
染色体の安定維持機構解明に挑む:親子・兄弟姉妹間で染色体数の異なるフナをモデルに
Project/Area Number |
12J09234
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 未来美 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | フナ / 倍数性変動 / マイクロサテライト分析 / フローサイトメトリー / 次世代シーケンサー |
Research Abstract |
①4n親魚を用いた交配実験 これまでに分析した2nおよび3nを親魚とする交配実験から得られたF1仔魚に加え、4n雌×2n雄、3n雌×4n雄、4n雌×4n雄など、4nフナを親魚とした交配から得られたF1仔魚およそ200個体について、昨年度開発した42の新規マーカーを用いたSTR分析を行った。 その結果、4n雌から生じたFl個体は全て基本的に、雌親と全く同じアリルを持つ雌親のクローンであった。これにより、フナの4n雌は3n雌と同様に、4n非選元卵を生じ、これが精子核と受精しない雌性生殖により繁殖していると考えられた。また、4n雄を用いた交配では、4n雄は生殖能力を有し、2n雄と同様に、半数体の精子を生じていると考えられた。この研究から、フナにおいて染色体構成の変動がどのように起こっているかを明らかにするという本研究の目的を達成する上で、非常に重要である4n雌や4n雄の繁殖様式に関する多くの知見が得られた。 ②クローニングによるSTR近傍領城の塩基配列決定 これまでに行った交配実験から得られたFl仔魚およそ1,000個体を対象としたSTR分析の結果、およそ300個体で、両親とは長さの異なる増幅断片が得られるなど、予想と異なる分析結果が得られた。 このうち、雌雄1ペアとそのF1仔魚2個体の計4個体について2遺伝子座をクローニングし、増幅断片の塩基配列を決定した結果、F1仔魚でみられた、両親とは長さの異なる増幅断片と、両親のいずれかと長さの同じ増幅断片の塩基配列を比較すると、4%程度の塩基置換が確認された。これにより、両親と異なる長さの増幅断片は、繁殖を介した突然変異によりもたらされたものではなく、目的の領城と異なる、配列の類似した領城が増幅されたことにより得られたと考えられた。さらに、本年度末からは次世代シーケンサーを用いた近傍領域の大量塩基配列決定も開始している。本実験が完了すれば、フナにおける繁殖を介したSTR領城での突然変異の有無や頻度等が明らかになると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画として①前年度中に行った交配実験で使用した親魚および得られた艀化仔魚のうち、再確認が必要であると考えられた個体や、より詳細な検証が必要であると考えられた個体についてのマイクロサテライトDNA分析、②新規マイクロサテライトマーカーを用いた自然フナ集団の分析を挙げていた。①に関しては、マイクロサテライト分析だけでなく、クローニングや次世代シーケンサーを用いた分析も順調に進んでおり、本研究の目的であるフナ類における倍数性変動の仕組みを理解する上で重要で有用な情報が多く得られている。また、②も、共同研究で順調にすすんでいる。以上から、25年度の研究は順調に進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に行った研究で、24年度に確立した実験手法を用いてさらなる分析を進め、多くの有用な情報が得られた。26年度は前半には、これまでの交配実験で確認できた繁殖を介した倍数性変動が、実験時に使用した性腺刺激ホルモンの影響によるものでないことの確認を行う。このために、野外で採集したゲンゴロウブナ、キンブナ等、倍数体が報告されていないフナや金魚に性腺刺激ホルモンを投与し、得られた仔魚の倍数性を判別する。 後半には、これまでに行った研究を総括し、総合考察を始める。追加で実験が必要になった場合には、随時行いつつ、論文発表の準備をする。
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