2014 Fiscal Year Annual Research Report
染色体の安定維持機構解明に挑む:親子・兄弟姉妹間で染色体数の異なるフナをモデルに
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12J09234
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 未来美 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自然排卵由来仔魚 / 性腺刺激ホルモン / 個体群構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
①性腺刺激ホルモンを投与しない自然排卵雌を用いた交配実験を行った。日本の本州におけるフナ類の産卵期である4-6月に、霞ヶ浦で採集した排卵中の3倍体雌およそ70個体を用いて人工授精を行い、得られたF1について倍数性分析と新規マーカーを用いたマイクロサテライト分析を行った。その結果、3倍体雌の排卵した3倍体非還元卵が精子と受精することで、3→4倍体の倍数性変動が自然排卵由来F1でも生じている事が確認できた。
②①より、繁殖を介した倍数性変動はフナの本質的な性質であると確認できた。この性質についてより深く知るためには、倍数性が親と異なるF1個体を用いて交配実験を行うなど、数世代に渡ってフナを飼育する必要がある。しかし、大きく成長し、遊泳力が高いフナについて、長期間多くの個体を飼育するのは困難である。そこで、フナを元に品種改良され,飼育の容易なキンギョに着目し、繁殖を介した倍数性変動の有無を確認した。キンギョの2倍体雌と2倍体雄を用いて交配したところ、キンギョにおいてもフナと同様に繁殖を介して倍数性変動が起こることが確認できた。
③ゲンゴロウブナを除く日本のフナ類は従来、形態や倍数性に基づき5つの亜種に分類されてきた。しかし、近年のミトコンドリアDNAに基づく系統解析の結果、5亜種は遺伝的に区別できない事がわかってきている。そこで、霞ヶ浦水系個体群を中心とした野生のフナ類について、形態の計測・倍数性分析・マイクロサテライト法による核DNA分析を行い、得られた情報と従来の亜種分類を照らし合わせ、考察した。その結果、従来の亜種分類は倍数性および核DNA情報に基づくグループ分けとも一致しないことや、クローン間でも形態に差があることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目後半~3年目前半にあたる26年度における本研究課題の当初達成目的は、琉球系統を中心とした、ユーラシア大陸縁辺部に分布するフナ類を用いた交配実験を行うことと、ゲンゴロウブナ・キンギョを用いた対照交配実験を行うことであった。このうち、琉球系統のフナを用いた交配実験はすでに前年度までに済んでおり、多くの新しい知見が既に得られている。また、キンギョを用いた対照交配実験も行われ、キンギョにおいてもフナと同様に繁殖を介した倍数性変動が起こっていることが確認できた。さらに当初の計画には無かったが、野生個体群について本研究を通じて新規に開発されたマイクロサテライトマーカーを用いた集団構造に関する研究も進み、それらに関する結果をまとめた論文も執筆中である。以上のことから、本年度の研究はおおむね順調に進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
年度に交配実験に用いる親魚を採集した霞ヶ浦水系は極端に2倍体の少ない水域であったため、2倍体の自然排卵雌を用いた実験は未だ実施できていない。そこで27年度には、26年度中に沖縄島より採集し、現在飼育中の2倍体フナを用いて、性腺刺激ホルモンを用いない交配実験を実施する予定である。 交配実験により得られたF1仔魚について、倍数性分析ならびに本研究で新規に開発したマイクロサテライトマーカーを用いて核DNA分析を行い、繁殖を介した倍数性変動の有無と、倍数性変動が起こっているのならば、その起こり方を明らかにする。得られた結果をこれまでに研究結果と照らし合わせ、研究を総括し、総合考察を始め、論文発表の準備をする。
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Research Products
(2 results)