2012 Fiscal Year Annual Research Report
広告産業におけるグローバル・ローカル環境への適応と創造性に関する地理学的研究
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12J09270
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古川 智史 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 経済地理学 / クリエイティブ産業 / 広告産業 / 集積 / 地方中枢都市 / 福岡市 / 取引関係 / 広告制作 |
Research Abstract |
1.国内外のクリエイティブ産業,広告産業に関する研究成果のレビュー クリエイティブ産業に関する研究として,主に地理学における研究視点の整理を進めた.特に,文化産業の集積の議論を早くから展開したScottの論考を中心に検討した.この成果の一部は,修士課程で行った東京の事例研究の投稿論文における理論的な枠組みの構築に寄与したと考えている.なお,投稿論文は学術誌『地理学評論』に受理,掲載された. 2.日本の広告産業の国内および海外動向に関する各種統計資料に基づくマクロ的な分析日本の広告産業の動向として,各種統計資料のデータ収集を行った結果,大都市を中心に依然として広告業の集中が見られるものの,その地理的偏在性が徐々に低下していることが明らかとなった.海外の動向については,世界各国の広告市場に関するデータを整理し,広告市場の成長の中心が先進国から新興国へ,また先進国を中心にマスメディアからインターネットへのシフトが進んでいることが整理された.また,創造性に関して,国内外の広告賞を取り上げ,受賞主体に関するデータベースを作成した. 3.日本国内の特徴的な都市を事例とした実態調査 2.の分析を通じて,福岡市を対象地域に選定し,実態調査を行った.まず,資料分析,主要アクターへのプレ調査を実施した.次に,福岡市の広告関連事業所に対しアンケート調査を実施した.その後,3度にわたり対象地域に滞在し,聞き取り調査を実施した.これらの結果をもとに,福岡の広告産業の集積の変容を考察し,従来指摘されていた福岡の広告市場の限定性を克服する,地方の広告業の新たな局面として位置づけられることを指摘した.この成果は,日本地理学会春季学術大会(立正大学)において口頭発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存研究のレビューを通じた理論面の検討において不十分な点も残るが,統計資料のデータ収集,広告賞の受賞主体のデータベースの構築では一定の成果を上げることができた.また,福岡市の広告産業の事例研究では綿密な現地調査を実施し,その成果も日本地理学会春季学術大会において発表することができた.したがって,全体としてはおおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の方策については,研究計画に基づき,日本の広告産業の海外展開についての事例研究を実施する予定である.その際に,日本の広告会社の海外現地法人へのインタビューを計画しているが,アクセスが困難なことも想定される.その場合には,広告関連の業界団体,もしくは海外勤務経験のある広告関係者へのインタビューに変更することを考えている.これと並行して,不十分だったクリエイティブ産業に関する既存研究の成果,課題の整理を進め,本研究課題の理論面の精緻化に努めたい.また,福岡市の事例研究についても,必要に応じて補足調査の実施を考えている.
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Research Products
(2 results)