2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規水溶性リン原料の開発およびリン酸塩機能材料の高機能化
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12J09285
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 〓成 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 溶液法 / 安定なリン原料 / 均一合成 / 蛍光体 |
Research Abstract |
本年度は、水溶性リン前駆体の調製と構造解析、および、得られた水溶性リン前駆体の有用性を示すためにEuをドープしたKSrPO_4蛍光体の合成を実施した。その結果、ほかの塩と沈殿を形成しない安定かつ水溶性のリン化合物が、リン酸とエチレングリコール、ヘプタンの混合溶液の還流により得られることが明らかとなった。^<31>P{^1H}NMR測定の結果、得られたリン化合物はエチレングリコールーリン酸オリゴマーから構成されており、その反応率は還流条件に依存していることを明らかにした。長時間もしくは高温の還流では、エチレングリコール間での縮合による不溶性の副生成物が生成することから、安定な水溶性リン原料の作製条件を、393K、24時間とし、このときのリン酸のリン酸オリゴマーへの変換率は55%であった。 調製したリン原料またはリン酸を用いた錯体重合法により、KSr_<0.97>PO_4:Eu_<0.03>の合成を行った。リン酸を原料に用いたときには、合成途中に不要な沈殿が生じ、結果として、不純物相の生成が確認された。一方、調製したリン酸前駆体を用いた場合は、合成途中で沈殿形成は見られず、目的物質を単相で得ることができた。固相法により合成した試料も目的物質が単相で得られたが、これらの試料の中で、リン酸オリゴマーを用いて作製した試料が最も高い発光強度を示した。これはEuが試料中に均一に分散していることや粒度分布が狭いことに由来するもので有ることが、各種測定により示唆されている。 以上より、従来原料よりも安定なリン原料を開発することにより、より高機能な材料が合成できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の第一目標は、新しい水溶性リン原料を開発することであった。種々のアルコール類とリン酸の反応による安定な水溶性化合物の創成を目指し、エチレングリコールを用いることで安定なリン原料が得られることを明らかにした。また、得られたリン前駆体を用いて、構成元素が均一に分散した蛍光体が合成可能であり、その材料が高い機能を発揮することも見出したことから、おおむね研究は順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発した方法により得られるリン前駆体は、水溶性かつほかの塩とも沈殿を形成しないことから、当初の目的を達成しているといえる。一方で得られた前駆体中には未反応のリン酸が45%含まれており、このリン酸をすべて水溶性オリゴマーに変換することができれば、より安定なリン原料になると考えられることから、より反応率を高くできるプロセスを構築する。また、調製したリン原料の有用性を一種の化合物でのみしか実施していないことから、その汎用性を示すために、多様な化合物の合成を試みる。
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Research Products
(6 results)