2013 Fiscal Year Annual Research Report
高速フォトクロミズムを利用した自己組織化過程の時空間制御
Project/Area Number |
12J09290
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
武藤 克也 青山学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イミダゾール二量体 / ビラジカル / 原子価異性 / フォトクロミズム |
Research Abstract |
ビラジカルの化学はその磁気的相互作用についての知見を得るのみでなく、化学結合形成に関する理解を深めるうえで非常に重要である。Chichibabin's炭化水素のように2つのラジカルがフェニル基のパラ位に位置する分子においては、分子内に2つの不対電子を有する開殻ビラジカル構造と、全ての電子が対をなす閉殻キノイド構造の2種類の極限構造を考えることができる。この2つの極限構造は原子価異性体と見なすことができ、通常はこれらビラジカル構造とキノイド構造は共鳴構造として記述される。Chichibabin's炭化水素はビラジカル構造とキノイド構造の間に熱平衡が存在することが示唆されているがその詳細は明らかとなっていない。一方我々は、イミダゾール環をフェニル基のパラ位に配置したBDPI-2Y誘導体において、ビラジカル構造とキノイド構造が熱平衡として存在し、原子価異性体が独立に存在する系を見出した。さらに、[2.2]パラシクロファンで架橋した[2.2] PC-bridgedbis (imidazole dimer)を新たに合成し、そのフォトクロミック特性を検討すると、ラジカル種から元のイミダゾール二量体へと戻る高速フォトクロミズムと、ビラジカル―キノイド間の熱異性化反応の2つの特性を同時に有する特異なフォトクロミズムを示すことがわかった。また、この化合物においては2つのビスイミダゾリル部位が(i)キノイド種、(ii)ラジカル―キノイド種、(iii)テトララジカル種の3つの状態をとることがわかった。一方で、[2.2] PC-bridged bis (imidazole dimer)にBODIPYを導入した誘導体にビラジカルの極大吸収波長である420nmの光を照射すると、励起直後からキノイド種に由来する600nmの吸収帯が確認でき、さらに600nmの吸収帯の大きさが励起光強度に依存したことから、ビラジカル―キノイド異性化は熱的に進行するのみでなく、光励起によっても異性化していることが示唆された。tF-BDPI-2Yにおいても同様に光異性化が起きたことから、BDPI-2Y誘導体は光、熱によってビラジカル―キノイド異性化が進行する特異な系であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常共鳴構造式で表されるビラジカル構造とキノイド構造の間に熱平衡が存在することを見出し、活性化エントロピー項が共鳴か熱平衡化を決める重要な因子であること、またビラジカルがキノイドへ光異性化するという、初の現象を見出すことに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
ネマチック液晶に光学分割したビナフチル架橋型イミダゾール二量体をキラルドーパントとして導入することでキラルネマチック液晶を作成し、フォトクロミズムに伴うピッチ長変化を検討する。またMOSAICを用いて光照射することで液晶に部分的な相転移を引き起こす。光照射強度、時間、範囲、回数や温度を変化させた時の液晶パターンの時空間発展の相違を詳細に検討する。昨年度の研究過程で成果が得られたビラジカルーキノイド異性化についてより詳細に検討すると共に、異性化の圧力依存性を検討することでエントロピー項が反応に及ぼす影響について検討する。
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Research Products
(14 results)