2012 Fiscal Year Annual Research Report
高分子材料内の3次元配向分布可視化法の検討と熱伝導性制御への応用
Project/Area Number |
12J09326
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
引間 悠太 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC2)
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Keywords | 赤外分光イメージング / 分子配向 / 高分子球晶 / 複屈折 |
Research Abstract |
高分子材料中の3次元的な分子配向の不均一性を定量・可視化する手法の一つとして,赤外分光イメージング法を応用することを試みた.この手法に赤外分光法の測定・解析手法を応用することで,化学構造や結晶性,分子鎖の配向状態などの分布を定量的に評価することが可能になる.この手法を用いて高分子材料中の各種構造不均一性を定量的に可視化し,熱伝導性への影響を考察することで,微小領域中における熱物性制御の指針を見出すことを目標としている. 本年度において,周期的な構造分布を有する高分子バンド球晶について赤外分光イメージング法を応用し,その構造について詳細に評価を行った.偏光顕微鏡下で,特定の高分子球晶を観察すると,数十μmの幅を有する同心円状のバンド(帯)構造が観察されることが知られでいる.バンド球晶中では分子鎖が試料面外に配向した領域と面内に配向した領域が交互に現れるため,それに対応して試料厚さ方向の熱伝導性が周期的に大きく変化することが知られている.バンド球晶について赤外分光イメージング法により分子配向解析を行うため,新たに多重偏光法という解析法を提案した. ポリ-L-乳酸(PLLA)のバンド球晶では,赤外分光イメージング法から計算した分子配向度,分子鎖の配向方向の二次元分布と複屈折イメージング法から求めたリタデーション,遅相軸の方向の二次元分布と非常によく一致することがわかった.これはPLLAが一軸性の屈折率楕円体を有するためである. 一方,ポリヒドロキシ酪酸(PHB)は二軸性の屈折率楕円体に由来する二重バンド構造を偏光顕微鏡下で示すことが知られているが,赤外分光イメージングを用いて分子配向分布を可視化したところ,全く異なるバンド構造が発現することがわかった.評価に用いる吸収ピークによって2種類の正反対な単純バンド構造が観察され,これらはそれぞれPHB結晶軸のb軸とc軸の配向に由来している可能性を見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
顕微ATR測定による3次元的な配向分布可視化法の検討を行う予定であったが,現在の研究環境において使用出来る装置では試料が破壊されてしまうことがわかった.したがって,3次元的な分子配向の不均一性を有するモデル試料の作成方法の検討や,従来法の改良を先に行った.
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Strategy for Future Research Activity |
3次元分子配向測定を非破壊で行うため,ATRクリスタルを接触させたままイメージング測定を行う,ATR-FT-IRイメージング法に注目した.この手法を用いた3次元的な分子配向評価手法について取り組むため、イギリスのImerial College LondonのProf. Kazarianの研究室にて研究を行う予定である.Prof.KazarianはATR-FT-IRイメージングに関する第一人者であり、先進的な研究を数多く報告している.これまで取り組んできた偏光解析手法を応用することで,分子配向,化学構造,結晶状態などの3次元的な分布の可視化を試みる.
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