2012 Fiscal Year Annual Research Report
局所的外部シグナル導入による、大腸菌の誘引応答時間の計測
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12J09327
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐川 貴志 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | chemotaxis / E.coli / bacteria / microscopy / signal transduction / signal amplification |
Research Abstract |
「研究の目的」 同一細胞上の複数のべん毛モーターの、外部シグナル導入に対する回転方向変化を観測することで、外部シグナルに応じた細胞内シグナルがどのように細胞内を伝達していくかを明らかにし、細胞の情報処理システムを理解する。 「研究実績」 ・新規光学系を開発することで、大腸菌の細胞周囲に局所的に外部シグナルを導入することが可能となった。また、導入した外部シグナル濃度の定量方法を確立することができた。 ・外部シグナルの導入に対する、細胞の応答時間を計測することに世界で初めて成功した。複数細胞の平均から得られるものではなく、個々の細胞から得られる1細胞計測の結果から、新たな知見を得ることができると期待される。 ・細胞の応答時間の距離依存性から、細胞内シグナルが、シグナルの発信源からべん毛モーターへと方向性を持って伝達される様子が明らかになった。また、距離依存性から導出される拡散係数は、これまでの研究で報告さえているシグナルの拡散係数に一致し、細胞内の情報伝達の本質が細胞内シグナル分子の拡散であることが明らかになった。これらの結果により、これまでブラックボックスであった細胞内の情報伝達過程を初めて明らかにすることができた。 ・細胞の応答を引き起こす、外部シグナル濃度の閾値を一細胞計測により世界で初めて計測することができた。この結果は、近年注目されているバクテリアの外部シグナル検出機構の共同性を強く支持する結果である。 ・細胞応答の時間内訳を、細胞の酵素反応に要する時間、情報伝達に要する時間に分解して解析することに初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目標である、細胞内情報伝達の様子を明らかにすることに成功したのに加え、外部シグナルの細胞応答の閾値の1細胞計測、細胞応答時間の内訳の解析、のように予想以上の結果も得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
・外部シグナル濃度を減少させた場合の、細胞が誘引応答から復帰する際の外部シグナル濃度の閾値を、シミュレーション、実験から導出し、細胞応答前後の細胞の外部シグナル感受性のヒステリシスの有無を調査する。 ・誘引応答を引き起こす外部シグナルの研究が一通りまとまってきたので、今度は忌避応答を引き起こす外部シグナルを用いて同様の実験を行い、誘引応答、忌避応答時の情報伝達の違いについて調査することでシグナル応答時の情報伝達システムを包括的に明らかにする。
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