2012 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ自由主義の知識社会学:市民社会の史的基盤の解明
Project/Area Number |
12J09354
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 裕 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 市民的自由主義 / 社会学史 / 社会学理論 / 市民社会 / 計量歴史社会学 / 国際研究者交流 / ドイツ |
Research Abstract |
近代ドイツ思想史を事例に、近代市民社会の形成に対して自由主義的思考が果たした役割とその功罪両面を知識社会学的に分析することが本研究の目的である。初年度にあたる本年度は、現在の社会学理論の自由主義的バイアスを批判的に測定するために、(1)ドイツ連邦共和国知識人史の分析と(2)社会学の基礎概念の歴史社会学的検証を行った。 第一点目については、連邦共和国における保守主義的自由主義と批判的社会理論という二つの系譜を1930年代におけるそれぞれの源流にまで遡って追跡した。具体的には、ハンス・フライヤーに代表されるライプチヒ学派とニクラス・ルーマンの社会システム理論の関係、およびマックス・ホルクハイマーとその後の批判的社会理論の関係の分析を行った。その結果、前者については、コミュニケイションやコードといった抽象的な社会的システム理論を構成する基礎概念がヴァイマール保守主義の自由主義的転換を前提しながらも、それを限界づけるという動機に支えられたものであること、また同時に、この問題設定は、ルーマンだけでなく、他の同時代の研究者(歴史家のラインハルト・コゼレックや哲学者のユルゲン・ハーバーマスら)にも共通して見出しうること、が明らかとなった。後者については、市民的自由主義、およびそれを批判するヴァイマール保守主義との対抗関係というホルクハイマーの批判理論を支える構図がその後の批判的社会理論においても維持されつつも、経験的研究との接続可能性の確保という方向へと洗練されていったことが明らかとなった。 第二点目については、計量比較歴史社会学という方法に着目し、既存の社会学理論の有効性の検証を行った。そのための前提として、計量歴史社会学の方法論について検討を行い共著論文にまとめた。具体的な成果については、次年度以降に学会報告および学術論文として発表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外の研究者との交流によって当初の予定よりも内容面での大きな成果を得ることができた。その成果については、まだ論文として公刊されていないが、すでに脱稿した論文もあり、総じて当初の予定通りの成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果について引き続き論文としてまとめて積極的に発表していくとともに、当初の研究計画に従って、19世紀ドイツにおける市民的自由主義の成立局面についての知識社会学的分析を進める。
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Research Products
(2 results)