2012 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー宇宙電子・ガンマ線観測による近傍加速源・暗黒物質の研究
Project/Area Number |
12J09410
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤池 陽水 東京大学, 宇宙線研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | CALET / 宇宙線加速・伝播 / 暗黒物質 / 国際宇宙ステーション / 加速器実験 / シミュレーション計算 / 宇宙線電子 / 宇宙線陽子・原子核 |
Research Abstract |
本研究では、高エネルギー宇宙線の観測から宇宙線近傍加速源や暗黒物質の探索を目指している。このため、国際宇宙ステーションに搭載する高エネルギー宇宙電子、ガンマ線観測装置(CALorimetric Electron Telescope : CALET)の開発を進めており、加速器実験やシミュレーションを通じて、検出性能の最適化を図っている。本年度は、検出器の性能検証のため、欧州原子核研究機構(CERN)のSPS加速器を用いて2度のビーム試験を実施した。2012年9月24日から10月15日にかけて行った実験では、CALETのフライトモデルと同じ構造を持つ熱構造モデルを用いて、μ粒子(150、180GeV)、電子(10-290GeV)、陽子(30-400GeV)の照射実験を実施した。μ粒子による最小電離粒子を基に各検出器を較正し、電子、陽子のシャワーイベントではエネルギー分解能や角度分解能などの観測性能について、シミュレーションデータが実験データをよく再現することが確認できた。2013年1月24日から2月4日に行った実験では、鉛の破砕核を用いた重イオン(30GeV/n)の照射実験を実施し、電荷測定性能に関する実験を行った。高統計のイベントを取得しており、詳細な解析を進めている。また、CALETの運用中に軌道上での検出器較正を行うため、シミュレーション計算を基に、トリガーイベントから較正に利用できる最小電離粒子イベントを選別する手法を開発した。軌道上の宇宙線が受ける地磁気による遮蔽効果や大気で生成されるアルベド粒子を考慮して検出レートを計算し、CALETの運用プランを見据えたシミュレーション研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2014年度から運用を開始するCALETの実現に向けて加速器試験やシミュレーション計算を進めている。 今回行った加速器実験はフライトモデルを模擬した検出器を用いて、高統計のデータを収集することができ、検出器性能の詳細な評価とシミュレーションモデルの最適化が進めることができた。また運用に向けた基礎資料となるシミュレーションデータも作成が進んでおり、今後の取得データの解析に向けた準備が順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのシミュレーション計算や加速器実験で得られたデータを基に、引き続きシミュレーションモデルや解析手法の最適化を進める。特に加速器実験で得られた成果をシミュレーション計算に還元し、CALETの詳細な観測性能の評価を実施する。同時に、AMS-02などの最新の観測データを踏まえ、CALETによる観測予測の計算から期待される科学的成果について見積もる。 また間近に控えるCALETの打ち上げに向けて、軌道上における最適なデータ較正が可能な運用プランを用意すると共に、科学目的に即したトリガーモードの運用プランをシミュレーション計算から最適化する。観測後のデータ解析のために、地上系の解析システムを構築し、所期の目的に沿った解析の実施に向けて準備を進める予定である。
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Research Products
(5 results)