2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ複合構造におけるスピン依存伝導現象の理論的研究
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12J09480
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
挽野 真一 独立行政法人理化学研究所, 柚木計算物性物理研究室, 特別研究員(PD)
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Keywords | スピントロニクス / 超伝導 / 強磁性体 / 近接効果 / ジョセフソン効果 |
Research Abstract |
本研究では、s-波超伝導/強磁性接合における近接効果によって出現するスピン三重項クーパー対のスピン依存伝導現象を理論的に研究した。研究目的は、スピン三重項クーパー対のスピンを利用したスピントロニクスへの応用のための基礎理論を構築することである。スピン三重項クーパー対を利用する利点は、強磁性体中のスピン三重項クーパー対の伝搬距離は、電子スピンによるスピン流と比べると約1000倍長い(2)そのスピン角運動量の大きさは、電子スピンの2倍であり、従来の電子スピンを利用したデバイスと比べて、高性能なスピントロニクスへの応用が期待できる。これらの問題は、現在のスピンロトニクスの重要なテーマの一つである、効率良く遠くまでスピン流を伝搬させることが出来る可能性があり、今後のスピントロニクスデバイスの研究開発を促進する物である。 本年度では、2層構造の強磁性体(F)を2つのs-波超伝導体(S)で挟んだS/F1/F2/S接合において、Fを流れるスピン流を理論的に調べた。その結果、スピン流は、超伝導体間の位相差によって電圧降下無しで強磁性体中を流れる事が分かった。S/F1/F2/S接合における位相差駆動によるスピン流の起源は、近接効果によって強磁性体中に誘起されるスピン三重項クーパー対(STC)である。そのために、このスピン流は、F中を長距離(数十ナノメートルから数百ナノメートル)に渡って伝搬することが可能となり、効率良くスピン流を伝搬させることが出来る。従って、超伝導/強磁性多重接合を流れるスピン流は、強磁性体中を長距離伝搬することが出来るために、スピントロニクスへの応用が期待できる。更に、本研究で取り扱う接合系では、ジョセフソン電流が実質的にゼロになるにも関わらず、スピン流は有限になる事も分かった。この結果は、クーパー対のスピンと電荷の自由度を分離することが出来ることも示唆している。従って、これらの結果は、応用だけでなく、物性物理学としても新しい研究成果となった。
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Research Products
(3 results)