2012 Fiscal Year Annual Research Report
Semaphorin3Aシグナルのシナプス可塑性における役割
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12J09533
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高橋 葵 横浜市立大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | セマフォリン3A / AMPA型受容体 / 記憶・学習 / 受動的回避行動試験 |
Research Abstract |
セマフォリン3A(Sema3A)は、発生期の神経回路形成時に軸索を適切に標的細胞へ導く分泌型軸索ガイダンス分子として広く知られている。申請者が所属する研究室では、Sema3Aの従来知られていた機能のみならず、樹状突起スパインの成熟促進といった機能を有することを明らかにしてきた(Sasaki et al.,Neuron.2002 Morita et al.,J Neurosci.2006 Yamashita et al.,J Neurosci.2007)。 はじめに申請者は、Sema3Aがポストシナプス構造を成熟させることから、Sema3Aシグナルのシナプス伝達における生理機能に着目をした。その結果、新たにSema3Aシグナルが記憶の獲得・維持の分子基盤といわれているAMPA型受容体(AMPARs)をシナプスへ移行させることを明らかにした。さらに、in vivoにて受動的回避行動試験により、Sema3Aシグナルが記憶の獲得・維持に関与する事を示唆する結果も得た。 これらの結果は、シナプス可塑性におけるSema3Aシグナルの重要な役割を示している。このような背景から、本研究の目的は、Sema3Aが記憶の獲得・維持においてどのような役割を担うかを明らかにすることである。当該年度においては、ラットが記憶を獲得する前にSema3A受容体をノックダウンすることにより、AMPARsのシナプスへの移行を阻害することを新たに明らかにした。また、記憶の獲得の際にSema3A受容体がsynaptoneurosome画分にて発現が増加する傾向も得つつある。これらの知見は、Sema3Aシグナルが記憶の獲得または維持に重要な役割を果たすことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記憶を獲得する前にSema3A受容体をノックダウンすることにより、行動レベルで記憶の獲得に障害がみられたこと、さらにはAMPA型受容体を介したシナプス伝達が低下するという結果を得ることができた。これらの結果は、Sema3A受容体を介したシグナルが記憶の獲得・維持に関与することを示し、Sema3Aが記憶の獲得・維持の際に分泌されることを示唆する。従って、当該年度はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は、Sema3Aシグナルが記憶の獲得・維持に関与することを示唆する結果を得ることができたことから、記憶の獲得・維持の過程でSema3Aが分泌されるか否かを検討する。Sema3Aの分泌を観察するため、Sema3Aの分泌シグナル直下にpHluorin(pH感受性GFP)を融合させたpHluorin-Sema3Aノックインマウスを包括型脳科学研究推進支援ネットワークの支援を得て作製中である。このノックインマウスを用いることによりpH感受性分子の特性を利用し、細胞外に放出されたSema3Aの分泌の様子を観察する。また、in vivoにてSema3Aの分泌量の変化を経時的に測定可能なペプチドダイアリシス法(Takeda et al., Neurosci. 2011)を用いて学習前後の分泌量を測定する予定である。
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Research Products
(1 results)