2012 Fiscal Year Annual Research Report
マルチスケール熱力学連成解析システムによる多孔体材料中の物質移動および反応解析
Project/Area Number |
12J09539
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 佑弥 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 熱力学連成解析 / セメント硬化体 / 塩化物イオン / 液状水 / 六価クロム / セメント固化土 / 不溶化 / 溶出 |
Research Abstract |
今年度は、コンクリート-地盤複合材料の長期性能予測が可能な統合解析システムのフレーム構築およびモデル検証に取り組み、論文として発表した。 セメント-地盤複合材料中の微小スケール空隙における塩分・液状水移動を対象として、既往の熱力学連成解析システムに、塩分移動の可否を決定する閾空隙半径と、空隙壁面から液状水へ作用する摩擦抵抗のモデルを導入した。導入したモデルの検証のために、1年塩水浸せきされたモルタル供試体中の塩分分布および空隙構造を測定し、解析結果と比較した。結果、微小空隙が卓越する低W/C材料について解析による実験再現性が大幅に向上することが確認された。緻密なセメント硬化体中で,液状水の浸潤範囲が限定されることで内部相対湿度の上昇が抑制され,それに伴って内部で塩分移動が可能な連続経路が形成されないために塩分浸透が抑制される可能性が示された。構築した解析システムは、実構造物塩害劣化予測へも既に適用している。研究内容はコンクリート工学年次論文集第34巻、第35巻へ投稿した。 解析を行うに当たって必要なPCを補助金を用いて購入した。 粗大スケール空隙中のイオン移動・平衡を対象として、六価クロム不溶化汚染土の溶出過程の解析を行うシステムの構築に取り組んだ。既往システムへ六価クロム固定・溶出モデルを導入し、物質移動モデルを粗大空隙へ適用するために修正した。構築したモデルの妥当性を検証するために、既往のタンクリーチング試験を対象としだ解析を行い,本研究で用いる熱力学連成解析手法が様々なパラメータに対して良好に溶出挙動を再現可能であることを示した.更に、熱力学モデルと地球化学計算の連成システムを用いることで,共存イオンや酸化還元環境を考慮したクロム溶出計算を行うことを可能にした.研究内容は、第66回セメント技術大会にて口頭発表を行っており、今後論文にて公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度で予定していた通りに、実験結果および既往の研究結果を用いて既往解析システムへの塩分移動・液状水移動・クロム固定・溶出に関する各種モデルの構築・実装を行った。その結果、研究の目的としているコンクリート-地盤複合材料の長期性能予測が可能な統合解析システムのフレーム構築がほぼ完了している。移流環境下のイオン溶出試験は本年度は行わなかったが、代わりに、地球化学計算との連成解析を達成し、酸化還元環境等の複雑な地盤内のイオン溶出挙動を再現することを可能にした。
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Strategy for Future Research Activity |
個々のモデルの信頼性を向上させること、および、解析システムの適用範囲を拡張することを目的とし、各種実験を実施する。セメント硬化体中の塩分移動解析については、これまでにも継続している塩水浸せき試験供試体の測定の他に、新たに混和材を使用した供試体を作成して試験を実施しすることで、セメント種類に関するモデルの一般化を試みる。セメント固化処理土からのクロム溶出過程の解析については、土壌中移流環境下でのイオン溶出実験を実施し、移流卓越環境下へのモデルの適用性を検証する。また,モデルの実用性の検証のために,実サイトを対象とした解析に取り組む。サイトの選定にあたっては,データ保有主体について明るい東京大学生産技術研究所の教員に指導を仰ぐ。また、実規模への解析システムの適用の為に数十~百万要素の大規模計算を予定しているが、そのために新たに並列計算環境を構築することとする。
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Research Products
(6 results)