2012 Fiscal Year Annual Research Report
ホログラフィック双対性で迫るゲージ理論の強結合ダイナミクス
Project/Area Number |
12J09542
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
初田 泰之 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(PD)
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Keywords | 超弦理論 / adS/CFT対応 / 可積分系 / 熱力学Bethe仮説法 |
Research Abstract |
4次元最大超対称ゲージ理論におけるグルーオンの強結合散乱振幅をAdS/CFT対応と呼ばれるゲージ理論と超弦理論の間の双対性を用いて調べた。AdS/CFT対応は強結合・弱結合型の双対性であるので、ゲージ理論の強結合領域は超弦理論の弱結合領域に対応する。双対な超弦理論の立場からは、散乱振幅はAdS時空中で古典弦が作る極小曲面の面積によって与えられる。境界の形は各グルーオンの持つ運動量によって決定される。極小曲面の面積は、2次元の共形場理論(CFT)の可積分変形をした際に現れる熱力学的Bethe仮説法によって特徴付けられる。これまでの先行研究により、極小曲面が5次元AdS空間中の3次元AdS空間中にあるときは、散乱振幅をある特殊な極限の周りで解析的に展開でき、その具体的な表式が計算出来ることが分かっている。 本年度は、これを3次元ではなく、4次元AdS時空に一般化した。興味深い点は、3次元の場合は、対応する2次元CFTの変形は、ミニマル模型と呼ばれるよく知られたCFTの変形であり、一方4次元の場合は、Wミニマル模型と呼ばれるより一般化されたCFTの変形が対応する。我々は、このWミニマル模型を詳細に調べることで、極小曲面が4次元にある場合の散乱振幅の解析的表式を3次元の場合と同様に解析的に計算することに成功した。 また、並行してABJM理論と呼ばれるM理論において重要な役割を果たす理論の分配関数についても研究した。局所化と呼ばれる方法で得られた分配関数から、厳密な値や非摂動補正をどのように計算するのかということを詳細に調べた。得られた結果は、既に知られていた分配関数のラージNでの振る舞いを期待通り完全に再現した。また、分配関数が受ける非摂動補正についても解析的な表式を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、強結合散乱振幅の計算において、AdS空間中の極小曲面の面積を求める問題をAdS4空間に一般化することに成功した。またABJM理論の強結合領域における分配関数の振る舞いについても重要な結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、今後は最も一般的な場合である極小曲面が5次元全体にひろがる場合について調べていく予定である。並行してABJM理論の分配関数の非摂動効果についても引き続き調べていく。
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Research Products
(4 results)