2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J09660
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
畠山 哲央 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生物物理 / 概日時計 / 温度補償性 |
Research Abstract |
昨年度は、第一の研究課題として挙げていた概日時計の温度補償性(温度変化に対する周期の頑健性)メカニズムについて、計算機シミュレーションと理論の両面から解析し、既存の実験事実をほぼ完全に説明可能な新規のメカニズム(Enzyme-limited competition)を見出した。この成果はPNAS誌に論文として掲載されたほか、多数の国内、国際学会で発表した。 また、概日時計の(ATPなど)様々な化学物質の濃度変化に対する周期の頑健性(栄養補償性)に関しても、温度補償性と同様のメカニズムで説明可能であることを明らかにする事ができ、このテーマに関しては論文投稿準備中である。 さらに、前述のenzyme_limitedcompetitionの考え方を発展させ、他の生物学的な現象への適応を試みた。具体的な例として、細胞がいかに蛋白質のpost-translational modificationにより記憶を保持するかという問題について、特に注目し研究をおこなった。従来の蛋白質のpost-translational modificationのモデルでは、安定な状態として外部から受けた刺激に関しての記憶を埋め込むという考え方が一般的であった。それに対して、基質問での酵素の取り合いがあるような状況下(enzyme-limited competition)において、非常に遅い動的な緩和過程に記憶を埋め込む事が可能である事を見出した。これは、今までの細胞の記憶の考え方とは一線を画するコンセプトであり、今後、理論と実験の両面で発展していく事が期待される。このテーマに関しては、研究成果を日本物理学会の年会で発表した他、現在論文の投稿準備をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究の目的である「概日時計の温度補償性メカニズムの解明」は、完全に成し遂げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はenzyme-limited competitionを利用した記憶のメカニズムに関して、生物学的な妥当性を理論的に解明していく予定である。
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Research Products
(8 results)