2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J09668
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯野 優介 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 基本群 / Cartan部分環 / 自由量子群 |
Research Abstract |
フォンノイマン環(特にII_1型因子環)に定義される基本群とよばれる不変量について研究している。この計算は非常に困難とされていて、まともな計算結果が出たのは2000年以降である。そのような結果は全て,Cartan部分環と呼ばれる良い性質を持つ部分環とのペアを考える事で得られている. より具体的には,まずフォンノイマン環と部分環のペアに対して新たに基本群を定義し,適当な条件のもとでこれが元のフォンノイマン環の基本群と一致する事を示すというものだ.さらにある特別な形のフォンノイマン環(群作用から得られる)については,Cartan部分環とのペアの基本群が,群作用の情報に帰着される事が知られているため,ある程度の計算が出来る. ここで重要なのは,ペアの基本群がもとの基本群に一致する事を示す事であり,そのために必要な十分条件は,「Cartan部分環が適当な意味で一意的である」事だ.よって今年度はCartan部分環そのものに着目し,それが一意的に存在する例やCartan部分環を持たない例などを探した.Cartan部分環を持たない例は一見基本群の計算には役に立たないが,実際には一意性の証明と非常に類似の証明を経て得られるものなので,間接的にCartan部分環の理解を深める事に役に立つ. 私の今年度の最大の成果は,自由量子群と呼ばれる量子群から作られるフォンノイマン環がCartan部分環を持たない事を示した事だ.このフォンノイマン環は自由群フォンノイマン環と多くの共通の性質を持っているため,それ同様Cartan部分環を持たない事が期待されていた.今回の私の仕事により,自由群の場合と同様に,自由量子群の場合もCartan部分環を用いた基本群の計算が出来ない事が分かった事になる. これは否定的な答えだが,一方で自由量子群がCartan部分環を持つかどうかという問いは有名な未解決問題の一つであり,フォンノイマン環論の構造定理として大きな意味を持つ定理である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上で述べたように,私の研究と密接に関係している未解決問題の一つ,自由量子群フォンノイマン環がCartan部分環を持たない事を示せたから.
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Strategy for Future Research Activity |
今後もしばらくはCartan部分環そのものについて研究するつもりである.実際全ての基本群の結果はCartan部分環の研究から来ているため,基本群の研究とはようするにCartan部分環の研究だからである.重要なのは上にも述べたように,Cartan部分環を一意的に持つ例を一つでも多く見つける事である.
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Research Products
(5 results)