2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J09676
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
千賀 由佳子 愛媛大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プロテインキナーゼ / Ca^2/calmodulin-dependent protein kinase I / ゼブラフィッシュ |
Research Abstract |
細胞内情報伝達のKey Moleculeであるプロテインキナーゼ(PK)の機能に関しては、まだ明らかにされていない点が多く存在する。脊椎動物の胚発生過程では、限られた時間・空間において各組織が決まったルールに従って器官形成されるが、この過程もリン酸化を介したシグナル伝達機構によって厳密に制御されているはずである。しかし、胚発生過程のいつ、どこで、どの分子種のPKが器官形成に関与しているかはあまり分かっていない。当研究室では、PK間で高度に保存された触媒領域に着目し、PKを網羅的に検出することが出来る抗体を開発した。この抗体を用いてゼブラフィッシュ受精後72時間の胚からcDNAライブラリーを作製し、発現スクリーニングを行ったところ、Ca^<2+>/calmodulin-dependent protein kinase Iδ (CaMKIδ)を取得することが出来た。CaMKIδには3つのアイソフォームが存在するが、その中でもC末端領域の最も長いCaMKIδ-LLに注目して機能解析を行っている。RT-PCRおよび作製した特異的抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、初期胚においてCaMKIδ-LLは受精後48時間から発現することが明らかとなった。また、成魚では脳、眼、ヒレに発現していた。さらに、アンチセンスモルフォリノオリゴ(AS-MO)を用いたGene knockdownを行ったところ、脳、胸ビレ、軟骨の形成異常が見られた。これらの表現型は、精製タンパク質をAS-MOと同時にインジェクションすることでレスキューされたが、キナーゼ活性のない変異体タンパク質ではレスキューされなかった。以上の結果より、CaMKIδ-LLは胚発生段階や組織によって分布が異なっているが、正常な胚発生にはCaMKIδ-LLのキナーゼ活性が重要であることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究目的であるCaMKIδ-LLの個体レベルでの機能解析を行い、酵素学的諸性質を調べるとともに、胚発生過程におけるタンパクレベルでの詳細な発現時期、および成魚における発現組織についても明らかにした。また、モルフォリノオリゴを用いたGene Knockdownによりヒレや軟骨形成に異常が生じることを見出した。さらに、来年度から取り組む予定であった「CaMKIδ-LLの活性制御機構」に関しての研究に着手し、進めていくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
CaMKISの機能を調べる上で、内在性基質を同定することは不可欠である。そこで来年度は、開発した基質探索法(Senga et al. Anal. Blochem. 408:345-347,2011)により、ゼブラフィッシュ組織抽出液に含まれるCaMKJδの内在性基質を同定する。 この方法で同定が困難な場合は、GST-pull downやツーハイブリット法を試みる。その後は、点変異体や質量分析を用いてリン酸化部位を特定し、リン酸化の意義について調べる予定である。 また、CaMKIδは他のアイソフォームと異なり、低Ca^<2+>状態でも十分なリン酸化状態を維持しており、独特の活性制御機構の存在が強く示唆される。この理由はいくつか考えられるが、CaMKKによってCaMKIδがリン酸化されやすいためではなく、ホスファターゼの脱リン酸化を受けにくいのではないかと考える。今後は、他のアイソフォームと大きく異なるCaMKIδのC末端領域に注目し、この領域に結合してホスファターゼの接触を妨げるような活性調節タンパク質の同定を試みる。
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Research Products
(5 results)