2012 Fiscal Year Annual Research Report
太陽光エネルギーを駆動力とする波長応答型重合触媒の開発と高分子構造制御
Project/Area Number |
12J09686
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
村田 慧 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機金属錯体 / 光触媒 / 亜鉛ポルフィリン / イリジウム / パラジウム / 重合 / 太陽光エネルギー |
Research Abstract |
本研究では、太陽光エネルギーを触媒的有機分子変換反応へと利用し得る反応システムの構築を目指して、光増感部位に種々のクロモフォアを有する有機金属錯体の合成とその反応開発を行っている。本年度は、(1)ナフタレン-シクロメタル化イリジウムバイクロモフォア、及び(2)亜鉛ポルフィリンクロモフォアを含む有機パラジウム錯体の合成とその物性および光反応性の調査を行った。 (1)では、フェニルピリジン配位子の異なる置換位置に2-ナフチル基を導入した種々のバイクロモフォリックイリジウム-パラジウム二核錯体を合成した。これらの錯体ではいずれも、ナフチル基を持たないユニクロモフォリック錯体に比べ紫外~可視部における光吸収特性が向上し、励起三重項状態の寿命が大幅に伸長した。同錯体のスチレン基質に対する反応性について調べたところ、暗所下では触媒的二量化が進行するのに対し、可視光或いは紫外光照射下では触媒的重合が進行したことから、光照射のON/OFFによる反応のスイッチングが可能であることが分かった。特にフェニルピリジン配位子のフェニル環上にナフチル基を導入した錯体は光照射下で高い重合活性を示し、高分子量のスチレン重合体を与えた。さらに生成する重合体の分子量は照射時間に対して一次的に増加することを見出した。これらの結果は、均一系触媒反応において光エネルギーを駆動力且つ外部刺激として用いる新しい反応制御の可能性を示している。 (2)では、種々の連結様式により亜鉛ポルフィリンユニットを導入した2,2'-ビピリジル配位子を有するパラジウム錯体を合成した。種々のスペクトル測定から、これらの錯体ではカチオン性パラジウムフラグメントの導入に伴うビピリジル配位子の電子密度低下に伴い、亜鉛ポルフィリンの励起一重項状態からビピリジル配位子への光誘起電子移動が進行し電荷分離状態を生成することが分かった。すなわち亜鉛ポルフィリンの光励起により、その外周部に連結した金属フラグメントに電子的な摂動を与えることが出来る。したがって亜鉛ポルフィリンユニットを有するビピリジル配位子は適切な金属フラグメントと組み合わせることにより光酸化還元反応に広く展開可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、種々のクロモフォアを有する有機パラジウム錯体の合成に成功し、特にナフタレンとイリジウム錯体を組み合わせたバイクロモフォアを有する錯体が光照射下でスチレン類の触媒的重合に高い活性を示すこと、またその照射時間により重合体の分子量制御が可能であることを見出した。本研究の最終目標は光触媒的重合反応における高分子構造制御の達成であり、反応開発と重合体の分子量制御の点では概ね順調に進展していると考えられる。今後はより多様な反応制御の実現を目指し共重合反応等への展開を行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はバイクロモフォリックイリジウム-パラジウム触媒のユニークな光反応性に着目し、オレフィン共重合における反応制御へ展開したいと考えている。重合及び二量化の光スイッチングが可能なスチレン基質と、これと反応性の異なる他の基質とを組み合わせることで光照射条件による共重合体の配列制御を達成できる可能性がある。 また架橋配位子への置換基導入により、併せて重合体の立体制御を試みる。一方、亜鉛ポルフィリンクロモフォアを有するパラジウム錯体は光励起に伴い亜鉛ポルフィリンユニットから金属フラグメントへの電子移動を起こすことから光酸化還元反応系に適すると予想される。そこで導入する金属フラグメントを再検討しながら新規反応開発に取り組む予定である。
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Research Products
(4 results)