2012 Fiscal Year Annual Research Report
空中超音波フェーズドアレーによる非接触触覚インタフェースの研究
Project/Area Number |
12J09694
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 圭介 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 空中超音波 / 振動触感提示 / 逆問題 / バーチャルリアリティ |
Research Abstract |
本研究における主要な問題意識としては、近年の触覚情報処理において、a)ユーザが触覚情報をより手軽に、かつさまざまな場面において自由に得ることができるようにすること、b)触覚の受動的側面に着目し、これを生かした情報提示ならびにその応用を提案、実現することの2点がある。その方略として当該研究員のグループは空中に超音波の焦点を生成し、振幅に応じた音響放射圧が人体表面を物理的に押すことにより非接触、非拘束にヒトに触覚を提示できる"空中超音波フェーズドアレー"を用いた触覚システムを構築することを提案した。本年度において具体的に取り組んだ問題としては、D大開口アレーの構成による触覚刺激の強度向上およびワークスペースの拡大、2)放射圧振幅の時間変調による複雑な振動波形の人体表面への提示、3)立体的に配置した複数アレーによる音響放射圧の三次元空間分布制御の3つにまとめることができる。 1)については、同期駆動する9台のアレーユニット(452ml×576mm、2241素子)を構築し音波の焦点を形成した結果、人体表面に焦点領域の力に換算して瞬時最大値で7.4gfの圧力を生成することに成功し、焦点径は装置の60cm遠方において波長と同程度の値を保っていた。 2)について、先述の7.4gfを320段階に量子化し、2kHzの標本化レートにより時間変化する放射圧の人体上への印加を実現した。また、当該研究者は実録音音声波形から振動触覚波形を抽出し、皮膚上に提示する試みを行った。その結果、破裂感、ばねのような振動感、押下感など、これまでの空中超音波触覚にはない感覚を生成することができた。 3)については、三次元空間中の離散的な点群に対し各点での音圧が与えられているときにそれを実現する各素子の出力位相および振幅を決定する方略を二乗誤差最小化問題として定式化し、逆問題的解法を導出し、数値シミュレーションにより、初歩的段階ではあるが提案手法の妥当性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非接触触覚提示のための空中超音波のハンドリングに関し、単一焦点に限れば触覚提示に十分な1kHz以上でのサンプリングレートでの時間的変化を実現できており、また大型アレイの構築により遠方で強い触覚刺激を提示でき、提示できる触感の種類が飛躍的に増加した。さらに空中超音波の空間分布についてもこれを制御する数理的方略の見通しが立っており、先述の大型アレイを立体的に配置することにより実際に実験を行うことができる状況である。これによりさらに多様な触感を実現できる可能性が期待できる。以上、おおむね順調に進展していると自己評価をするに至っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
11.現在までの達成度に記述した通り、大型アレイによる立体的触感の生成の実験を行うことが第一の課題である。 実験の目的としては、空中超音波の立体的分布により奥行きを伴った触感がユーザに提示できるかどうかを確かめる、というものである。また、ユーザの身体の位置及び速度のセンシングをシステムに加え、それらの情報を提示刺激にフィードバックすることにより、提示できる触感のリアリティが増す可能性に着目している。たとえばスティックスリップのようなユーザの運動に応じて触感のタイミングが決定される類の現象の再現などが可能になることが期待される。
|
Research Products
(4 results)