2012 Fiscal Year Annual Research Report
新しい冷却手法による極性分子の極低温新奇量子相の探索
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12J09754
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 宏平 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 冷却原子気体 / 極性分子 / フェッシュバッハ共鳴 / 三次元光格子 |
Research Abstract |
本年度の研究目標は、極低温極性分子を生成する上で重要な中間状態である、フェッシュバッハ分子を高効率に生成することである。この際問題となることはフェッシュバッハ分子は、原子との衝突に弱いということである。前年度までの研究で、光トラップ中でフェッシュバッハ分子は衝突により非常に短い寿命を持つということが分かっていた。我々は三次元光格子の各サイトで分子を一つずつ生成し、その中でフェッシュバッハ分子を生成することで、原子と分子との衝突を抑制し、長寿命なフェッシュバッハ分子を生成することを計画した。実際に我々は三次元光格子を設計・実装しその中で分子を生成することで、長寿命なフェッシュバッハ分子を生成することに成功した。この時の分子の寿命は10ms程度で、光トラップ中では1ms以下であることから十分長くなっていることが分かる。この寿命は次のステップである誘導ラマン遷移を実行するのに十分な時間が確保できていることが分かっている。また、これは残った原子のトンネリングレートによって制限されていることが分かっており、これらの原子を吹き飛ばすことによって将来的には更に長寿命なフェッシュバッハ分子を生成することも期待できる。以上の手法で生成された分子は現在のところ1000個程度である。原子から分子への変換効率は大体数%程度であるが、これを制限しているのは、現在は熱的原子集団を光格子にロードしている為、それぞれの原子が一つずつ入っているサイトが数パーセントしかないことが考えられる。効率を上げる為には、縮退した原子集団を重ね合わせ光格子にロードし、二原子種の同時モット絶縁体を生成することが有効であると考えられる。よってそれを達成する為に我々は二原子種を同時縮退させ、重力による位置のずれを補正し、二つの原子雲を重ね合わせ、それらの振る舞いを調べた。フェッシュバッハ共鳴近傍での混合縮退状態の振る舞いは複雑で詳細には知られていなかったが、我々は混合状態で大きな原子数のロスがあることを発見した。このロスのメカニズムを調べることが、効率的なロードをする為に重要であり現在調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェッシュバッハ分子の光格子中での生成に成功し、実際に長寿命になっていることを確認できたため、当初の目標を概ね達成しているといってよい。また更に高効率な生成の為には、同時縮退原子集団の混合状態での振る舞いを調べることが重要であるが、我々はそこで大きな原子数の減少を確認した。これは今まで知られていなかったことであり、我々が初めて発見したことである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ同時縮退原子集団の混合状態での振る舞いを調べることが、高効率なフェッシュバッハ分子の生成につながると考えられる。従って原子集団を混合した時の時間・空間的な応答を調べることが重要である。我々は、水平・鉛直方向の二方向のイメージングを持っている為、それを利用して空間的な原子集団の分布を詳細に調べる。また、非破壊的なイメージング手法を用いて時間応答を詳細に調べることも検討中である。
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Research Products
(2 results)