2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本の気候変動政策の意思決定過程におけるマスメディアの役割とその影響に関する研究
Project/Area Number |
12J09803
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
朝山 慎一郎 東北大学, 大学院・環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 気候変動 / メディア報道 / ガバナンス / COP / 排出量取引 / 炭素回収・貯留(CCS) |
Research Abstract |
本研究は、1、日本の気候変動問題の政策決定過程において、政策決定者とメディアがどのような相互関係にあるか、また、メディア報道が気候変動政策の意思決定にどのような影響を及ぼしているか、2、今後のメディア報道を含めたより効果的な気候変動問題のコミュニケーションを促進するための課題を抽出することを研究目的とする。この研究目的を達成するための研究実施計画として、本研究では、次の3つの事例においてメディア報道の分析を行う:(1)国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)における国際交渉、(2)国内排出量取引制度の政策過程、(3)炭素回収・貯留(Carbon Capture and Storage : CCS)技術の研究開発及び政策過程、である。 本研究では、(2)の排出量取引制度の事例において、1997年~2010年までの朝日新聞・読売新聞・毎日新聞の三大紙の新聞記事1972件を包括的に分析し、メディア報道の内容が時代変化による政治的・社会的な文脈の変化にあわせて変化していることを明らかにした。また、(3)のCCSの事例において、1990年~2010年までの朝日新聞・読売新聞・毎日新聞の三大紙の新聞記事327件を包括的に分析し、メディア報道がCCSの技術開発・政策導入を非常に肯定的に描いていること、さらに、日本政府によるCCS政策を正当化する内容になっていることを明らかにした。(2)と(3)の双方の事例において、これまで日本の新聞報道を対象に、排出量取引制度とCCSがどのように報道されているかを包括的に分析した事例はなく、その意味で、高い研究意義があるといえる。また、排出量取引とCCSは、今後の日本の気候変動政策として政策的議論の活発化が予想される政策オプションであり、今後の日本の気候変動政策の行方について考察する上で、本研究の分析結果の重要性があるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記、研究実績の概要でも述べたように、当初の研究目的の課題のうち、2つの事例についてはすでに分析作業を完了し、途中結果を国際学会等で発表し、かつ、現在和文誌に査読付き論文を投稿中である。これより、現行の研究の進捗状況は、当初の目的に沿い、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、当初の研究目的の課題のうち、まだ未完である残り1つの事例について早急に分析作業を完了し、査読付き論文を作成する予定である。また、途中結果については、随時、国際学会等で発表を行う予定である。
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Research Products
(5 results)