2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J09838
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
青山 尚平 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 暗黒物質の素粒子的性質 / 崩壊現象 / Planck衛星の観測結果 |
Research Abstract |
第1研究課題として、私は崩壊する暗黒物質の研究を行った。昨年3月、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の温度ゆらぎの詳細な観測結果が公表され、CMBの温度ゆらぎからΛCDM模型に従って成長した場合の現在の密度ゆらぎの振幅の標準偏差σ8 (CMB)を示した。一方でPlanck衛星は銀河団の数を数え、それから推定されるσ8 (sz)も公表し、σ8 (sz)がσ8 (CMB)より2σ信頼水準で小さいことを示した。この結果の1つの解釈として宇宙には一般相対性理論の記述する重力不安定性によって生成された大規模構造を破壊するなんらかの構造が存在するということである。私は2011年度から研究を続けている暗黒物質粒子が宇宙寿命かそれより長いオーダーで2つの有限質量の粒子に崩壊する暗黒物質模型を考え、この暗黒物質がつくる物質の密度ゆらぎのパワースペクトルと現在のσ8を計算した。そして、私は暗黒物質の崩壊現象によりσ8 (SZ)とσ8 (CMB)の差が説明できることを示した。 第2研究課題として、私は重力波のうち0.01Hzから1Hzの領域の振幅の制限を行った。重力波の観測は超巨大ブラックホールの形成過程の解明、強重力場中での重力理論の検証のためにできるだけ広い振動数領域をできるだけ精密に測定することが求められる。しかし、この振動数領域は地上の干渉計での観測では地面振動の卓越によって、人工衛星を用いたドップラートラッキング法による観測電子回路のノイズが卓越して重力波の振幅上限は下げるのが難しかった。私はカーナビゲーションの基本となっている全地球測位システム(GPS)はナビゲーションの精度を保つために発信する電波の振動数安定性は10^<-15>の精度が維持され、その電波は地上まで10^<-12>の振動数安定性で伝送されている。重力波にはその進行方向と垂直に振興する電磁波の振動数を変える性質があり、大きな振幅hcの重力波が存在するとGPSの電波は地上に高精度では伝送できない。地上まで10^<-12>の振動数安定性で伝送できることからhc<4.8×10^<-12>という制限を与えた。この成果は査読専門誌Physical Review Dに掲載されたが、この制限は論文を投稿した段階でこの振動数領域における世界最高の制限となっていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度に購入したワークステーションにより大きな計算コストを伴う崩壊する暗黒物質の密度ゆらぎの時間発展の計算も同時並列で計算が可能になった。また恒星にの研究成果を暗黒物質の性質の解明の研究やそのほかの分野の宇宙論的研究に応用し、今までにない方法を提案できる状況になり、順調に研究は推進可能であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2013年度までの研究で暗黒物質粒子が2つの粒子に崩壊する崩壊現象が宇宙大規模構造に与える影響を摂動論の範囲内ではあるが評価できる状況になっている。最初の研究計画ではN体計算や3体崩壊なども研究する予定であったが、前者は崩壊現象で生じる軽い粒子の取り扱いが難しいこと、後者は宇宙論的摂動計算のもとになっているポルツマン方程式を解くことが困難になることがわかり、これらの研究課題を進行するのは困難になっている。一方で、暗黒物質の崩壊現象が宇宙論的に小さなオブジェクトに与える影響は計算するformalismは完成したため、これらに関する研究は遂行可能と考えている。
|
Research Products
(5 results)