2013 Fiscal Year Annual Research Report
蚊媒介性病原体の国内侵入監視システム構築のための基盤研究
Project/Area Number |
12J09845
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
江尻 寛子 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 節足動物媒介性感染症 / 吸血性節足動物 / アルボウイルス / オルビウイルス / アジア |
Research Abstract |
日本および国外の渡り鳥の経由地に生息する蚊の病原体(鳥マラリア原虫・各種ウイルス)の保有状況を明らかにし、渡り鳥を介した蚊媒介性感染症の侵入および拡大に備えるシステム構築に必要な情報を収集することを目的として本研究を計画した。2012年度において、蚊と鳥類、ダニと鳥類との間で伝播が成立していると考えられるウイルスの分離に成功した。本年度は分離したウイルスのゲノム解析および性状解析を実施した。 東京都林試の森で捕集されたヤマトクシヒゲカから分離された分節2本鎖RNAウイルスは、レオウイルス科オルビウイルス属のユーマティラウイルスの一種であることが確認された。本ウイルスの国内分布は初報告である。分離されたウイルスとコヤマヒルウイルス(Koyama Hill virus, KHV)と命名し、ウイルスの詳細解析を実施した。なお、結果の一部をまとめて、第66回日本衛生動物学会にて発表し、Archives of Virologyに投稿中である(2014年4月8日受理)。 一方、兵庫県西宮市で捕集されたアカコッコマダニから分離された分節2本鎖RNAウイルスは、レオウイルス科オルビウイルス属のグレートアイランドウイルスの一種であると確認された。本ウイルスの国内分布もまた初報告である。さらに、弱い細胞変性を呈したキチマダニの破砕サンプルを接種した培養上清を解析したところ、新種のアルボウイルスと考えられる分節1本鎖RNAウイルスの存在が示唆された。現在、マダニから分離された上記2種のウイルスの詳細解析を進めている。 今回、宿主鳥類の渡り行動と節足動物媒介性病原体の分子疫学を調査する上で指標となりうる病原体の分離に成功した。現在、国内における節足動物のウイルス保有状況に関する情報の蓄積を目的とし、キチマダニ由来の新種のアルボウイルスの詳細解析を継続して行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、国内における節足動物のウイルス保有状況に関する情報の蓄積を目的とし、2012年度に蚊およびダニから分離したウイルスの詳細解析を実施した。その結果、ヤマトクシヒゲカから分離されたウイルスは、レオウイルス科オルビウイルス属のユーマティラウイルスの一種であることが確認され、アカコッコマダニから分離されたウイルスは、同じくレオウイルス科オルビウイルス属のグレートアイランドウイルスの一種であると確認された。解析の結果、分離された2種のウイルスは節足動物と鳥類間で伝播が成立している可能性が高いことが示唆され、宿主鳥類の渡り行動と節足動物媒介性病原体の分子疫学を調査する上で重要な指標になる可能性が示唆された。以上のことから、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度において、蚊およびダニから節足動物が媒介する脊椎動物感染性ウイルス、すなわちアルボウイルスと考えられるウイルスを分離することに成功した。本年度は、解析を終えていない複数種のウイルスのウイルスゲノム構造(核酸・アミノ酸配列、遺伝子構造)の解明を進める。さらに、ELISA法等の血清学的診断法を確立し、国内に生息する野鳥のウイルスの感染(暴露)歴の調査を進め、野外におけるウイルスの分布状況に関する情報を収集する。さらに、日本とアジア各地で得られる節足動物由来ウイルスのゲノム塩基配列を比較し、ウイルス系統の地域特異性について考察する。そして、渡り鳥を介した病原体の持ち込みの現状を把握するとともに、将来予測に利用可能な情報の蓄積を目指す。
|
Research Products
(2 results)