2013 Fiscal Year Annual Research Report
軟体動物の貝殻が巻く分子メカニズム:貝殻形態の進化発生学的解析
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12J09867
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 啓介 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 軟体動物 / 形態進化 / 螺旋成長 / Decapentapregic |
Research Abstract |
巻貝の貝殻が螺旋状に規則的に巻くためには, 貝殻形成を担う外套膜の細胞に位置情報を与え, 貝殻の成長量を外套膜の部位間でコントロールする必要がある。しかし, 実際にどのように細胞の位置情報を与えているかは不明であった。平成24年度には外套膜での細胞の位置情報を与える遺伝子の探索を行った結果, シグナル分子Dppをコードするdppと呼ばれる遺伝子が巻貝(腹足類)の貝殻が螺旋状に成長するのに重要であることを明らかにした。軟体動物の仲間の中には, 腹足類のように螺旋状に巻いた貝殻を持つグループとして頭足類が挙げられる。特にアンモナイトやオウムガイは巻いた貝殻を持つ頭足類の代表である。そこで, 腹足類と頭足類の「貝殻の巻き」を制御する分子メカニズムが共通しているかどうかを明らかにするため, オウムガイの外套膜におけるDppのシグナルを伝達するpSmadl/5/8の発現解析を行った。その結果, 頭足類においても腹足類と同じ様に, 貝殻の成長パターンとDppのシグナル分布のパターンが一致することが明らかとなった。本研究成果によって, 腹足類だけでなく頭足類においてもDppシグナルが貝殻成長のパターニングに重要な役割を果たしていることが示唆される。先行研究での分子系統解析の結果と本研究結果を併せると, 軟体動物に属す腹足類, 二枚貝類, 掘足類, 単板類, 頭足類の共通祖先において, Dppによる貝殻成長の制御機構が獲得され, Dppシグナルの発現パターンの変更が軟体動物の貝殻の形態進化に重要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
巻貝類だけでなく頭足類の貝殻螺旋成長とDppとの関連性を明らかにすることができたことは, 貝殻の形態進化を理解する上で非常に重大な研究成果である。また, 近年の急速な分子生物学的な手法の進歩によって, 計画書の段階では取り入れていなかった次世代シーケンサーを用いた網羅的な遺伝子の発現解析を行うこともでき, 得られる膨大な情報量をもとにより発展的な研究を遂行できる状態が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(8 results)