2012 Fiscal Year Annual Research Report
院政期真言密教における図像集の編纂について-『別尊雑記』を中心に-
Project/Area Number |
12J09878
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
清水 紀枝 日本女子大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 真言密教 / 図像集 / 『別尊雑記』 / 醍醐寺 / 小野流 / 院政期 / 『覚禅鈔』 / 密教図像 |
Research Abstract |
本研究の目的は『別尊雑記』をはじめ、院政期に編纂された図像集にあらためて注目し、その内容構成や成立事情を明らかにするとともに、これらの図像集が実際に果たした具体的な役割を解明することである。 本年度は永村眞教授(日本女子大学史学科)の主導する、東大寺および醍醐寺における史料調査に参加し、『別尊雑記』や『図像抄』、および中世の図像類を実見調査する機会に恵まれた。美術史学的見地からその筆致や様式を分析するとともに、永村教授をはじめ、同行した日本史学の研究者から書誌学的な見地による助言を受け、新たな知見を得ることができた。 なお報告者はこれまで、院政期の真言密教寺院を中心として、如意輪観音というほとけの像容および信仰が日本独自の特異な展開を遂げたことに注目し、その背景で『別尊雑記』をはじめとする図像集が重要な役割を担っていた可能性を指摘してきた(「半跏思惟形の如意輪観音像の成立をめぐって一醍醐寺との関わりを中心に一」『美術史研究』46、2008年12月、早稲田大学美術史学会。「12・13世紀の日本における如意輪観音像の展開」『鹿島美術研究』年報27別冊、2010年11月。「東大寺大仏左脇侍と如意輪観音信仰」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』第57輯第3分冊、早稲田大学大学院文学研究編、2012年2月)。本年度は、『別尊雑記』の影響を受けた図像集『覚禅鈔』の記述に注目し、論文「醍醐寺をめぐる宝珠法の展開と如意輪観音信仰」(『巡礼記研究』第9集、巡礼記研究会、査読済、2013年度発行予定)において、如意宝珠を本尊とする修法と如意輪観音信仰の密接な関わりを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は東大寺および醍醐寺における史料調査において、中世の図像類を実見調査する機会に恵まれた。 その筆致や様式を分析するとともに、日本史学の研究者から書誌学的な見地による助言を受け、新たな知見を得ることができた。今後、これらの調査成果をさらに整理・分析し、密教図像集が担った具体的な役割を明らかにしてゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特に『別尊雑記』の内容・構成をめぐる問題に目を向け、他の図像集(『図像抄』、『覚禅紗』、『阿娑縛抄』等)との比較を行い、『別尊雑記』の独自性およびその図像の選択意図を明らかにしたい。さらに『別尊雑記』の成立と王権の関わり、および真言密教の発展・継承において図像集が担った具体的な機能についても追究してゆく。
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Research Products
(1 results)