2013 Fiscal Year Annual Research Report
院政期真言密教における図像集の編纂について-『別尊雑記』を中心に-
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12J09878
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
清水 紀枝 日本女子大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 真言密教 / 図像集 / 『別尊雑記』 / 密教図像 / 院政期 / 醍醐寺 / 小野流 / 『覚禅鈔』 |
Research Abstract |
真言密教の発展にともない、儀礼の作法およびその本尊となる図像が多様化してゆく中、とりわけ院政期において、これらを収集・分類した図像集が相次いで編纂された。特に、真言僧心覚(1117~1181)が編纂した『別尊雑記』は、院政期の図像集のうち唯一原本が残るものとしても注目される。本年度の課題は、『別尊雑記』をはじめとする図像集がこの時期に成立した具体的な経緯を明らかにすることであった。 なお院政期を代表する3つの図像集の編者(『図像抄』の恵什、『別尊雑記』の心覚、『覚禅鈔』の覚禅)はいずれも京都・醍醐寺と密接な関わりを持っていたことで知られる。昨年度に引き続き、永村眞教授(日本女子大学)の主導する醍醐寺の所蔵史料調査に参加することにより、最新の調査・研究動向を把握するとともに、図像集の成立と展開において同寺院が果たした役割について新たな知見を得ることができた。 また報告者はこれまで、『覚禅鈔』をはじめとする図像集の記述をもとに、院政期における小塔供養の盛行と真言密教の密接な関係を指摘してきた(「後白河院政期における「阿育王塔」の制作について」『奈良美術研究』11、2011年)。本年度はさらに一歩踏み込んで、籾塔と称される日本独自の小塔が生み出された背景に、真言僧が深く関わっていた可能性について論じた論考を提出した(「研究ノート會津八一記念博物館所蔵の三基の籾塔について」『會津八一記念博物館研究紀要』15号、2014年3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、醍醐寺所蔵史料調査に参加し、本年度の研究課題に関する多くの知見を得ることができた。また『覚禅抄』をはじめとする図像集の記述を精査し、日本独自の小塔供養の成立をめぐる問題について、新たな見解を提示する論文を提出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特に『別尊雑記』に目を向け、編者心覚の立場や当時の仏教界の動向等を関係史料によって追究する。これにより、院政期における図像集の成立背景および具体的な機能を明らかにしてゆきたい。
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Research Products
(1 results)