2012 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋およびインド洋における新生代のグローバル物質循環と環境変動の因果律の解明
Project/Area Number |
12J09919
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安川 和孝 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | グローバル物質循環 / 地球環境変動 / 太平洋 / インド洋 / 多変量解析 |
Research Abstract |
本研究では,太平洋やインド洋で採取された深海底堆積物コア試料の地球化学的分析を行い,試料中の様々な元素濃度等の時系列変化から,大陸起源物質や中央海嶺からの熱水起源物質等の流入量の変化を復元し,新生代におけるグローバルスケールでの物質循環の変遷と環境変動の因果律を解明することを目的とする. 本年度はまず,研究対象とするインド洋の深海底堆積物コアから,必要な試料の選定及び採取を行った.当該コアは,1970年代から2000年代にかけて深海掘削計画(DSDP)及び国際深海掘削計画(ODP)により採取されたものである.本研究では,なるべく連続的に古い時代の層まで掘削されている26本のコアを選定した-各コアからの試料採取箇所は,航海レポートに記載された微化石等の情報を基に地質年代と海底面からの深度を対応づけ,6,500万年前から現在までの新生代を概ね50万年刻みでカバーできるよう選定した.平成24年7月にコア試料が保管されている高知コアセンター(KCC)を訪問し,計2,192試料を採取した.採取した試料については蛍光X線分析装置(XRF)による主成分元素分析及び誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)による微量元素分析を順次進めており,現在以下の結果が得られている. 1.主成分元素については,前期始新世にあたる約400試料の分析結果から,幾つかの層準でCa含有量の減少が見られた.これは当時の全球的な環境変動に伴う海洋の酸性化と対応している可能性があり,平成25年度に実施予定である炭素・酸素同位体分析の結果と合わせて議論したい. 2.微量元素については,東部インド洋で採取された試料に最大1,100ppmを超えるレアアースが含まれていることが明らかとなった.これまでに高濃度のレアアースを含む深海底堆積物(レアアース泥)の存在は太平洋のコア試料分析結果から報告されているが(Kato et al., 2011, Nat. Geosci.),インド洋においても太平洋と同様にレアアース泥の形成が起こっていることが初めて認識された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,新生代全体をカバーするインド洋深海底堆積物の大規模データセットを新たに構築し,多変量解析手法を適用することで過去の物質循環の変遷と地球環境変動の関係を議論する.このため,必要な試料の採取・分析を,研究計画開始後可及的速やかに実施しなければならない.この点について,試料選定・採取は滞り無く遂行され,その後の分析も順次行われていることから,本研究計画はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,XRF及びICP-MSによる試料の分析作業を進めるとともに,得られたデータに対し多変量解析手法を適用し,堆積物の起源成分や成因について年代別に検討を行う.所属研究室で保有している太平洋の堆積物コア試料についても,インド洋試料と同様に年代推定を行った上で解析に加え,よりグローバルな観点からの考察を進める.また,試料の一部については,平成25年度内にKCCで炭素・酸素同位体分析を実施予定である.グローバル物質循環の短期的擾乱とそれに対する地球システムの応答を理解することで,物質循環と環境変動の因果関係を考察するにあたり重要な知見が得られることが期待される.
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