Research Abstract |
歯科矯正治療において,矯正力を作用させるための固定源を確保することが重要である.近年,マイクロスクリューなどの骨に固定源を求めるデバイスが開発され,予知性の高い治療が可能となったが,骨内に埋入する必要があるため,.歯根等を損傷するリスクがある.より安全性の高い骨膜下デバイスの研究も進められているが,治療開始までに非常に長い待機期間を要することが問題となっている.本研究は,ワイヤー形状のデザインを採用することで,これまでの先行研究が達成できなかった,待機期間の短縮を可能とする新規矯正用骨膜下デバイスの開発を行うものである.デバイス形状変更の効果を検証するために,ラット頭蓋骨を利用した動物実験で,ワイヤー周囲の骨形成状態及び骨とワイヤーの接合強度に関して検討した.試料は径0.5mmの純チタンワイヤーとし,表面性状は,コーティングなし(Bare群),ハイドロキシアパタイトコーティング(HAp群)及びハイドロキシアパタイト/コラーゲンナノ複合体コーティング(HAp/Col群)について検討した.骨膜下に試料を設置して4週後の組織学的所見で,Bare群と1恥群はワイヤーは線維組織に被覆されていた.一方,HAp/Col群ではワイヤーが線維組織によって被覆されることなく,骨と直接接合している画期的な所見が得られた.さらに,組織形態計測と力学試験による定量評価を行ったところ,HAp/Col群は有意に大きな骨接触率,新生骨高さ,骨との接合強度を示した.HApコーティングは,骨内に埋入される人工歯根では有用性が認められているが,骨膜下では十分な効果が認められなかった.本研究では,骨膜下のような骨形成に不利な環境下であっても,HAp/Colコーティングは,チタン表面への骨形成を促進し,デバイスと骨の直接接合を可能にするという重要な所見が得られた.
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