2012 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル・サミットと国際市民活動の循環的相互影響:WTO閣僚会議とG8を事例に
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12J09965
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富永 京子 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会運動論 / グローバルな社会運動論 / 社会ネットワーク分析 / 組織論 |
Research Abstract |
本年度は、調査、分析手法(インプット)、そしてアウトプットの三つを比較的バランスよく遂行できた。第一に調査について、東京、北海道、イギリス(ロンドン、コルチェスター)のNGO従事者20名近くに取材を行った。この結果として、政治活動参加・継続・離脱にかかわる要素として個人のライフスタイルや私生活が大きな影響を及ぼすことを発見できた。特に、政治活動をする上で個人が常に「離脱」という選択肢を抱えている点を発見したことについては、今後の社会運動研究に対しても大きなインパクトを及ぼすものと想定される。第二に分析手法として、混合調査法(Mixed Method)、比較研究(Comparative Study)、そして社会ネットワーク分析(Social Network Analysis)の基礎を学習した。これらの手法を基にしてサミット抗議行動に関する組織間・個人間ネットワークのデータセットを作成し、分析した結果、興味深い知見があった。さらにこうした調査結果と分析結果を国内外の研究会・学会・招待講演(合計12回、うち国内7,国外5)で報告および議論した結果、今後は個人間のソーシャル・ネットワークをベースとして、個人のキャリアと人間関係が運動の参加・継続・離脱に及ぼす影響を検討する方向にシフトした方がいいのではないかと考えている。研究実施計画では、分析対象として特に政府の態度や構造といったマクロ要因に焦点を当てていたが、次年度以降の計画を変更し、個人の生活やモチベーションといったミクロ要因を中心に研究する必要があるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特に、昨年夏に開催されたEssex Summer Schoolにおいて、社会ネットワーク分析を学習できた点が大きい。これにより、政府の動向や社会構造の変化といったマクロ要因でなく、また個人のモチベーションやキャリアといったミクロ要因でもなく、両者をつなぐ「メゾ要因」とでもいうべきものが計測可能になった。また、質的なデータと量的なデータを組み合わせるという点でも、社会ネットワーク分析の社会運動研究への応用は一定の価値を持つものと考えられるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、調査によってさらにプライベートなデータ(個人の私生活、政治活動を継続する上での困難、他者との関係)を聞き出す必要があるため、情報提供者とのラポールの維持と形成がより重要な役割を占めるだろう。それと同時に、特にタイムスケールに沿ったネットワーク分析手法の獲得をしなくてはならない。これに関しては、 ASNA,INSNAといったネットワーク分析関連の学会が主催するワークショップやサマー・スクールにおいて学習を試みたい。
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Research Products
(5 results)