2012 Fiscal Year Annual Research Report
3次元ハイブリッドシミュレーションによる磁気リコネクションの乱流イオン加速
Project/Area Number |
12J10000
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東森 一晃 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 磁気リコネクション / 乱流 / イオン / 加速 / イオンビーム / 波 / 乱流モデル / マクロな乱流効果 |
Research Abstract |
今年度は、磁気リコネクションでのイオン加速に必要だと考えられている乱流生成と、乱流がマクロな物理に与える影響について、主に2次元ハイブリッドシミュレーションと新たに開発した乱流シミュレーションモデルにより調べてきた。乱流生成について明らかにすることは、乱流イオン加速のメカニズムを議論してゆく上で非常に重要である。例えば乱流はそのランダムな渦の動きから確率的な物理過程を引き起こし、観測から示唆されるようなMaxwell分布から外れた幕型のエネルギースペクトルを作り出す候補として有力である。研究に用いたハイブリッドシミュレーションコードはイオンを粒子として解き、電子を流体として解くことでイオンの運動論効果を議論することが可能であり、これを用いて2次元磁気リコネクション系でのイオンの運動論効果による乱流生成を詳しく調べた。シミュレーション結果と、プラズマ分散関数を用いた線形解析から以下のことがわかった。まず磁気リコネクションで、イオンは初期加速を受けイオンビームを作る。そして生成されたイオンビームは、背景にある電磁場と相互作用して波(ホイッスラー波)を励起する。またパラメータ研究を行うことでこのホイッスラー波を生成するイオンビームの速度や密度は、磁気リコネクション初期の磁気圧とプラズマ圧の比に依存する。この結果から、どのような条件で磁気リコネクションでの乱流生成が起きるかについて明らかになり、今後の乱流イオン加速の可能性を探る上で重要な結果を得た。一方、ハイブリッドコードでは議論が不可能なマクロな系で、乱流が磁気リコネクションの物理にどう影響するのかを調べるため、磁気流体乱流モデルを通常の磁気流体シミュレーションに組み込んだ新たな乱流シミュレーションモデルを開発し、乱流の存在によって磁気エネルギーの変換効率や構造といったマクロな磁気リコネクションの性質が変わることを明らかにした。例えば磁気リコネクションによるエネルギー変換効率の上昇は、背景にある電場の強度を増幅させる等、イオンの加速という観点からも重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ミクロなスケールを見ることが可能な電磁ハイブリッドシミュレーションによって、2次元系であっても運動論に起因する乱流生成がおこることがわかり、その原因を突き止めることができた。それに加え、マクロな乱流の効果を見るために新たに開発した乱流シミュレーションコードにより、エネルギー変換効率等の重要課題に対する一つの新たな答えを提唱することが可能となった。これらの結果は前者が投稿準備中で、後者はPhysical Review Letterに投稿し現在査読中であり、研究成果として着実に現れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予測では、イオンの運動論効果が入った乱流生成には、空間3次元性が重要だと考えていたが、これまでの研究で、空間2次元系でもプラズマパラメータによっては乱流生成が起こることが明らかとなった。従って、今後は空間2次元でも乱流によるイオン加速が見えるような空間サイズのシミュレーションを行ない、乱流の性質などを細かく議論しつつイオン加速について調べてゆく。また計算資源の面から、それ以上大きなスケールのリコネクション物理については、乱流をモデル化したシミュレーション手法によって、2次元3次元的な乱流効果を調べてゆく。
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Research Products
(6 results)