2012 Fiscal Year Annual Research Report
伝統的取引から近代的市場取引への遷移メカニズム:インドネシア農産物流通の事例
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12J10020
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 真也 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 農産物流通 / 伝統的取引 / 流通市場 / ネットワークモデル / インドネシア |
Research Abstract |
本年度はボゴール農科大学を拠点とし、西ジャワ州、東ジャワ州の各一ヶ村を中心に約9ヶ月の現地調査を行なった。その目的は、生産地から消費地までに偏在する商人の取引ネットワーク構造を把握し、その動態を計量的に明らかにすることである。主要な結果として以下の3点が挙げられる。 (1)産地市場に点在する商人間の市場競争の結果、従来の過密な流通過程に分散していた商業形態が経営規模の大きな商人により統合されている。そして、これらの商人はジャカルタ、スラバヤといった大都市の市場への流通路を持っているため、都市消費市場の価格形成に産地の地場商人が無視できない影響を与えることが示された。この点は地理的に広範囲の調査になるため、既往研究では実証的に触れられていない点であり、学術的に貴重である。 (2)商人の日常的売買において、携帯電話などの電子通信機器を用いた取引相手の探索よりも、オートバイを利用した探索が産地商人の取引ネットワークの構築要素である。インドネシアは携帯電話の普及率も高く、その利用による取引の近代化が既往研究からも示唆されていた。しかし、実際には対面折衝が生産地では好まれる点は事例研究として重要なものである。 (3)都市と生産地を結ぶ商人間の関係は、地縁と労働移動によるものが多いことを事例として示した。特に西ジャワ州では同一村の出身者で取引をする場合が多い。また、都市市場での見習い期間を経て出身村で商人になる場合も観察された。市場価格に関する情報なども基本的にはこのようなネットワークを基にやり取りされており、社会的関係を変数としたネットワークモデルによる流通市場の分析の有用性が示唆された。流通市場において実証的にネットワークモデルを援用した研究例は少なく、次年度以降の研究の進展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計量モデル用のデータの収集を想定していた調査地で、基礎的なデータの収集を終え、仮説の構築を進めることができた。ただし、計量的実証用のための300人程度のサンプル調査ができていない点とスーパーマーケットに関連するデータの収集が遅れている点には注意が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
近代的市場取引で大きな役割を担っていると考えられるスーパーマーケットのデータを未入手な点が問題であった。しかし、世界銀行やミシガン州立大と関連研究を行なっている研究機関の協力を得ることができたため、既に調査の準備を終えている状況である。従って、次年度の最初の3ヶ月を利用して、スーパーマーケット関連のサンプル調査で対応する。
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