Research Abstract |
2012年7月, CERNの大型衝突型加速器(LHC)にてヒッグス粒子が発見された。現在までの実験結果から, このヒッグス粒子は陽子の130倍ほどの質量を持つことが明らかになっている。最小超対称標準模型の場合, ヒッグス粒子の質量は模型のパラメーターの関数として予言される。そこで, ヒッグス粒子の発見後, 発見されたヒッグス粒子の質量を実現するパラメーター領域を調べる研究が精力的に行われて来た。その結果, 超対称性スケールが電弱スケールと比べて1~3桁ほど高い時, 観測値を説明することができると明らかになった。 このような状況を鑑みて, 超対称性の破れのスケールが高い場合の超対称性標準模型を研究することにした。一般に, 超対称性の破れのスケールが高い場合には, 加速器実験でこの模型を調べることが困難になる。そこで, 超対称性の破れのスケールが高くてもその兆候を捉えることができるような物理量は何であるか, その物理量に関する現在の実験から超対称標準模型をどの程度制限することができているのか, 将来実験で超対称性を発見することは可能なのか, などを調べることにした。 このような物理量として, 今年度の研究では, 特に陽子崩壊および中性子電気双極子モーメントに着目して研究を行った。超対称スケールの高い場合における最小超対称大統一理論で陽子崩壊率を計算した結果, 観測されたヒッグス粒子質量を説明することができる程度に超対称性の破れのスケールが高い場合, 陽子崩壊の寿命は現在の実験制限を逃れていると分かった。さらに, 近い将来の実験によって, このシナリオを検証することが可能であることも明らかになった。また, 中性子電気双極子モーメントへの超対称性粒子の寄与を精密に計算することで, この物理量から超対称スケールに対して課される制限を高い精度で導いた。
|