2015 Fiscal Year Annual Research Report
事前経験に基づく脳の時間情報処理の最適化に関する研究
Project/Area Number |
12J10103
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
松崎 梢 高知工科大学, 総合研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 時間知覚 / 多感覚 / 心理物理学的実験 / fMRI(機能的磁気共鳴画像) / 認知心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】平成27年度も引き続き,視・聴覚刺激における脳の時間情報処理がどのような過程で行われているのか,その神経メカニズムを解明するために,心理物理学的手法として,時間順序判断(TOJ:Temporal Order Judgment)と同時性判断 (SJ:Simultaneity Judgment)の二種類の時間的判断課題を用い,fMRI(機能的磁気共鳴画像)装置と連携された実験を行ってきた. 【これまでの研究実施状況と今後の展望】 まず,これまでの実験パラメータを見直し・改良を行った.視覚刺激について,視野角の改変と白色のリング状と黒色の四角形からなるオブジェクトへ改変を行ったほか,刺激をモニターに提示する際の刺激のバックグラウンドをグレーにすることで,視覚刺激の見やすさにも考慮した.また,聴覚刺激については,音の高さを1800Hz,持続時間を15msに改変した.次にSOA:Stimulus Onset Asynchrony(各課題に対する応答率が50%となるような刺激時間差)について再検討を行った.被験者の判断に偏りが生じないようにするため,以前より間隔幅を持たせたほか,立ち上がりと立下りを幅広く設定した上で,応答率に有意差がみられないSOAを検討した.その結果,0,±70,±140,±210,±280,±560msのSOAで各課題の応答率に有意差がみられなかったので,先述のSOAを実験課題のSOAとして設定した. 現在,これらの改変パラメータを使用し,時間判断課題遂行中の脳活動についてfMRI計測と脳機能統計解析ソフトSPM12を用い課題関連脳活動領域の同定を進めている.この4月に本研究に先行して,触覚刺激を用いた時間情報処理に関する共同研究が刊行されたことから(Miyazaki et.al.,Scientific Reports,2016),本研究が進めば,視・聴覚による多感覚の時間情報処理過程についても同様の結果が得られるのか,異なる情報処理過程をたどるのか,その解明が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では,平成27年度中に視・聴覚刺激やSOAといった実験パラメータの再構築や,実験フローの再検討などを行い,fMRIを用いた脳活動計測を行い,多感覚における時間知覚に関連する脳領域の特定を行う計画であった. しかし,現在のところ,実験の準備は整ったものの,fMRI実験を進めている段階である. ただ,今後実験を進めていくことは決定しているので,今後の進捗が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は速やかにfMRI実験を行い脳活動の計測を進めていき,多感覚間における時間情報処理のに関連した脳活動領域の同定を目指す. 特定された脳領域に関して,さらに機能的役割や領域間の相互作用などについても検証を進めていく. また,VBM(voxel-based morphometry)解析を行い,時間知覚に関連した脳領域について,その形態変化について調べることで,構造面からも脳の時間情報処理がどのような過程で行われているのかを明らかにし,神経機序のモデル化に発展させる.
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