2012 Fiscal Year Annual Research Report
不安神経症・失感情症(アレキシサイミア)に対する内受容感覚とその神経活動の影響
Project/Area Number |
12J10119
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
寺澤 悠理 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所・精神生理研究部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 感情 / 内受容感覚 / 心拍検出課題 / 構造化面接 / fMRI / 島皮質 |
Research Abstract |
情動に関連した精神障害においては、内受容感覚の鋭敏さが感情経験に影響を与え、障害の発症と密接な関係にあることが報告されており、身体由来情報の処理と感情経験の関係のメカニズムが注目を集めている。このような背景を鑑みれば、不安神経症などの症状改善には自己の身体への注意の方向付けや、知覚した身体反応に主観的な意味づけに関わる脳部位の特定、およびその脳活動の制御方法の獲得が有効な手段の一つではないかと考えられる。本研究の第一段階では、健常者を対象に、内受容感覚と主観的感情の関係性を検証し、感情経験を生み出す脳と身体の関係性を明らかにすることを目的とした。健常成人を対象として、主観的に感じられる不安の強さと、身体内部への注意の方向付けの関連性を、その行動指標および脳活動から明らかにするためのfMRI研究を実施した。脳機能画像研究とともに、実験心理学的課題、半構造化面接、質問紙法などを併用して、内受容感覚の鋭敏さと個人の感情経験の特性を描出することを試みた。 すべての結果を総じて、内受容感覚の鋭敏さとメタ認知能力の高さ、そして不安傾向の高さは相互に密接な関係性にあることが示された。一方、アレキシサイミア傾向の高さは、内受容感覚の鈍麻と関連している可能性が示唆された。これらの結果は、内受容感覚の処理過程の情動コントロールへの影響を表していると考えられるが、実際に内受容感覚処理過程への介入によって、主観的な情動に変化が生じるのかに関しては、今後も継続的な検討が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に、健常者を対象としたfMRI研究の遂行や論文の執筆を行った。初年度の研究計画は、ほぼ当初の予定通り進行しており、部分的な結果を学会などで発表するに至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度のデータは、個人の内受容感覚の鋭敏さと感情感受性の関連性を示唆するものであった。このような研究成果を踏まえて、来年度は不安に関わる主観的報告、情動関連の脳活動(大脳辺縁系など)、および内受容感覚に関わる脳活動(島皮質など)が、疾患群と健常群とで異なるかどうかを検証する。
|
Research Products
(6 results)