2012 Fiscal Year Annual Research Report
出芽酵母のサーチュインを介した細胞老化制御機構に関する研究
Project/Area Number |
12J10171
|
Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
亀井 優香 長浜バイオ大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 細胞老化 / 分裂寿命 / メタボローム / トランスクリプトーム / サーチュイン / 出芽酵母 |
Research Abstract |
出芽酵母は1個の細胞について分裂寿命(一つの細胞が老化して死ぬまでの出芽回数)を測定することができ、細胞レベルの老化・寿命研究モデル生物として有用である。出芽酵母の長寿遺伝子SIR2はよく調べられており、サーチュインとして広くヒトにも保存されている。本研究ではサーチュインを介する分裂寿命制御機構、および老化の進行にともなう細胞の変化を明らかにすることを目指す。今年度は以下の課題に取り組んだ。 1.出芽酵母サーチュインの機能を調節する多様な代謝経路の解明 長寿命となるSIR2遺伝子変異を取得するために、SIR2遺伝子にランダム変異を導入して分裂寿命を評価した。増殖を指標として分裂寿命を評価できる測定系の利用を試みたが、SIR2遺伝子を破壊した分裂寿命測定株に野生型SIR2遺伝子をもつプラスミドを導入しても寿命は回復しなかったため、この測定系が利用できないと判断した。 2.老化細胞のメタボロームおよびトランスクリプトーム解析による新規寿命遺伝子の探索 野生型株から0、4、7および11世代の老化細胞を回収し、これらの細胞から細胞内代謝物とRNAを抽出し、ガスクロマトグラフィー質量分析によって37種類のアミノ酸と有機酸を定量するとともにDNAマイクロアレイ解析により全遺伝子の転写量を調べた。代謝物情報について主成分分析を行うと、世代ごとに形成されたクラスターが世代順に分離し、この分離に対してTCA回路中間代謝物が正に貢献し、アミノ酸が負に貢献した。ピルビン酸に加えてTCA回路中間代謝物の一部が老化の進行にともない増加し、これらを代謝する酵素遺伝子の転写量が増加したため、老化の進行にともないTCA回路が活性化していると考えた。一方、多くのアミノ酸が4世代から次第に減少し、アミノ酸合成酵素遺伝子の転写量が減少したため、アミノ酸量が老化の進行にともない転写レベルで制御されると考えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サーチュインの機能を調節する代謝経路の解明については既存の分裂寿命測定系を使った実験系が確立できず、目的まで到達していないが、老化細胞のオーム解析については解析が計画以上に進行しており、現在論文投稿の準備を進めているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
長寿命sir2変異を分離する実験系が確立できなかったため、Sir2pタンパク質を活性化する様々な代謝反応に注目し、その代謝酵素遺伝子を破壊したときの分裂寿命を測定することにより分裂寿命制御遺伝子を同定する。また、老化細胞のオーム解析で得られた情報から、老化にともなって引き起こされる具体的な現象を明らかにする予定である。老化細胞でアミノ酸量が減少した原因についてさらに詳しく調べることで、老化関連遺伝子を明らかにできると期待する。
|
Research Products
(2 results)