2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J10233
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
安田 哲也 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | X線天文学 / 中性子星 / モンテカルロシミュレーション / 「すざく」衛星 |
Research Abstract |
本研究課題は、超新星爆発によって形成される中性子性の一種であるマグネター天体をエックス線やガンマ線の波長帯域を主として観測することによって、マグネター天体の持つ超強磁場中での特異な物理現象を実証し、その放射起源に迫ることである。本年度はその下準備として、(1)マグネターの観測に用いる将来観測衛星ASTRO-Hの開発、(2)ASTRO-H衛星の最新パフォーマンスを用いた観測計画立案、(3)現在稼働中の観測衛星「すざく」への観測応募、の3点の研究を行った。(1)は、宇宙研究開発機構や米国スタンフォード大学の研究者と協力し、モンテカルロ数値計算コードの開発行った。従来のシミュレーションコードでは統計的に解を求めるのに対し、このモンテカルロ数値計算コードはエックス線光子と検出器の相互作用をコンピュータ上で一つ一つ再現することを可能にするため、より実際のエックス線観測装置の振る舞いや検出器応答を再現することができる。そのため、エックス線観測装置の感度や測定精度の検証において大きな役割を果たすことが出来ると期待している。すでに、この計算コードはバージョン0.0.0としてASTRO-H開発チーム内での公開に至っている。(2)については、理化学研究所やNASAの研究者と協力し、日米欧の国際会議で立案の結果を発表するに至っている。(3)は、現在稼働中の「すざく」衛星の観測公募にマグネター天体PSR J1622-4950の観測提案を応募し、採択された。観測は平成25年度に行われるが、「すざく」の特徴である低バックグラウンド観測を活かすことで、初めてエックス線帯域でのPSR J1622-4950に付随する超新星残骸の観測に成功できると見込んでいる。もしも観測に成功し、エネルギースペクトルの形を議論するために十分な統計の観測データを得ることができたならば、中性子星形成当時の初期自転周期を見積もる事が可能である。これは、未だ明らかになっていないマグネター天体の形成過程や形成環境を議論する上で重要な情報となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の主な目標であったモンテカルロ計算コードはすでに公開するに至ったが、「すざく」衛星搭載WAM検出器で観測されたマグネター天体1E 1547.0-5408から放射されたショートバーストについての論文は執筆しているものの、論文雑誌への投稿には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の二本柱の一つであるASTRO-H衛星の開発においては、平成24年度で公開したモンテカルロ数値計算コードのさらなる開発を続ける。特に、超高分散素子の感度の推定に必要なバックグラウンドの計算がまだ済んでいないため、引き続き次年度でも研究を行う。また、もう一方のマグネター天体の観測による研究については、平成24年度からの積み残しであるマグネター天体1E 1547.0-5408のショートバーストについての論文を仕上げ投稿する。さらに、観測予定のマグネター天体PSR J1622-4950についても、観測されしだいデータ解析に取り組む。
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Research Products
(2 results)