2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J10233
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
安田 哲也 埼玉大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | X線天文学 / 中性子星 / モンテカルロシミュレーション / すざく衛星 |
Research Abstract |
本研究課題は、星表面の磁場強度が約10^<14>ガウスにも達する超強磁場中性子星「マグネター」の観測的な研究である。特に、エックス線やガンマ線の波長帯域で観測することで、マグネター天体の持つ超強磁場中での特異な物理現象を実証しその放射起源に追ることである。当該年度には、(1)現在稼働中の「すざく」衛星によるマグネター天体の観測データの解析および(2)2015年打ち上げ予定のASTRO-H衛星の観測精度向上に向けたモンテカルロシミュレータの開発を行った。 (1)「すざく」衛星搭載のWAM検出器は、マグネター天体から放射された突発的な増光現象「ショートバースト」の観測に成功した。私は、このデータを丁寧に解析することで、一つの解釈として超強磁場中で起こると量子電磁力学で予言されている「光子分裂」の観測的な証拠得た。この解析は、WAM検出器の特性を十分に理解し、信号処理部によるデータ処理時に発生するパイルアップを正しく補正する必要があった。これは、WAM検出器の開発・運用チームの一員である私にしかなし得ない成果であったと自負している。 (2)さらなる検証には「すざく」衛星では不十分なため、より精度の良いデータを得るためにASTRO-H衛星の開発にも参加した。主に、検出器や衛星構体の空間分布や質量分布をコンピュータ上で再現し、衛星軌道上での宇宙線との相互作用を再現するモンテカルロシミュレータの開発をおこなった。この数値計算コードはエックス線光子と検出器の相互作用をコンピュータ上で一つ一つ再現することを可能にするため、より実際のエックス線観測装置の振る舞いや検出器応答を再現することができる。そのため、エックス線観測装置の感度や測定精度の検証において大きな役割を果たすことが出来ると期待している。この計算の結果は、より正確に衛星軌道上でのエネルギー分布を再現し、入力することでよりいっそう再現性が高くなる。当該年度は、この宇宙線エネルギー分布をASTRO-H衛星と同じ要領で、現在稼働中の「すざく」衛星に対して入力することでエネルギー分布の再現性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マグネター天体1E1547.0-5408から放射されたショートバーストの「すざく」衛星搭載WAM検出器による観測について現在投稿論文としてまとめているが、まだ投稿には至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の柱であるマグネター天体の観測による研究について、平成25年度からの積み残しであるマグネター天体1E1547.0-5408のショートバーストについての論文を仕上げ投稿する。さらに、まだ解析に至っていないWAM検出器によるすべての観測データを系統的に調べ、マグネターからの放射起源の特性をあきらかにする。さらに、この結果は博士論文としてまとめる予定である。
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Research Products
(1 results)