2012 Fiscal Year Annual Research Report
社会性が基礎的外界認知に及ぼす影響の比較認知科学的分析
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12J10240
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
渡邉 創太 大阪教育大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | セキセイインコ / 知覚 / 錯視 / ミュラー・リヤー錯視 / 比較認知科学 |
Research Abstract |
本採用期間である3年間のうち、当該年度は1年目に当たる。当該年度成果の第1点目は、セキセイインコにおける汎用行動実験箱の作成に成功した点である。既に多数の成功例のあるハトや類人、ヒト用の汎用行動実験装置は、セキセイインコの体サイズの小ささ故タッチセンサが対応できず、使用出来ない。よって従来はコンピュータを使用せずヒトが手ずから行動訓練を行う、パーチ(枝)やボックス滞在時間を観察するなどの手法が用いられてきたが、当該年度は、特殊な赤外線カメラ方式タッチセンサおよび特別注文品のセキセイインコ用餌呈示装置の調達に成功した。 成果の第2点目は、この汎用行動実験箱を用いることにより、セキセイインコにおけるコンピュータディスプレイ内の特定の点へのつつき行動を指標とした行動形成に成功した点である。これにより、視知覚認知に関する研究がほとんど行われていなかったセキセイインコにおいても、既に多くの成功例のある一部の他種に比肩する行動実験の実施の道が拓かれた。なお、強化子として、従来の行動実験で用いられる一次性強化子(餌)のみだけでなく実験者の声を呈示することで、体重制限を行うことなく行動形成が成功した。このことは、動物福祉の面からも意義深い。 当該年度成果の第3点目は、セキセイインコにおけるミュラー・リヤー錯視知覚実験が当該年度末の時点で完了間近というところまで進んだ(そして次年度初頭に完了した)点である。この際、実験参加個体が一日に取り組んだ課題の試行数は実に288試行に及び、上述したような他の手続きでは極めて困難な訓練量が可能となった。 なお、これらの研究は所属機関である大阪教育大学の学部生と共同して行ない、卒業論文にて成果がまとめられる予定である。学生教育の面でも意義のある実験であったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用期間3年間を通しての最大の懸念事項であった、セキセイインコの汎用行動実験箱の作成に成功した点、実際にその装置を使い研究成果を上げているため。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトにおける知覚実験を実施予定であるため、装置など実験環境を整える必要がある。また、確たる食餌制限をおこなわずにセキセイインコの行動実験を実施しているため、モチベーションの不安定さ(またそれに付随する行動訓練の遅延)が問題となっている。この問題に対し、実験者の声かけや遊びなど、従来の枠にとらわれない試みが必要であると考えられる。
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Research Products
(3 results)