2012 Fiscal Year Annual Research Report
ニューベキアの複葉におけるフラクタル構造のモデリング
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12J10320
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中益 朗子 明治大学, 先端数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ニューベキアアクアティカ / 反応拡散系 / パターン形成 / 異形葉性 / 葉の形態形成 / 分枝構造 |
Research Abstract |
生育環境(温度・水没の有無)に基づいて異形葉性を示すニューベキアにおいて、温度変化に伴い様々な形態の葉が生じることを示した。そこで、複雑な二次小葉(分裂葉)を生じる条件下(20度・気中)で葉原基を解剖し、葉の発生過程の観察を行った。これによって、将来各小葉(分裂葉では裂片)へと成長する突起構造が葉原器のふちの部分に一気に生じるのではなく、葉身(葉縁)の伸長とともに徐々に加わることを確認した。この観察事実に基づいて複葉の形態についてモデリングを行った。 モデルでは、葉の縁の部分で空間的に周期的なパターンの形成をおこし、そのパターンに基づいて葉縁を外側へ伸長させる。さらに伸張により広がった葉縁上でパターン形成を持続させる。これを繰り返すことで、規則的な分枝パターンが得られることをシミュレーションから明らかにした。周期的なパターンの形成には、反応拡散系のチューリングパターンを用いた。この際、ニューベキアの複葉で見られる安定した分枝構造を得るためには、拡張した場においてピークの挿入が起こることが重要である。そこで、成長場におけるチューリングパターンのピークの挙動を解析した。さらに、シミュレーションで得られたこの分枝パターンの規則性が実際のニューベキアの葉にも当てはまるのかどうか確かめるために、複葉形成条件における発生過程の分枝パターンを調べ、比較を行った。ここからシミュレーションと実際の植物における分枝パターンにずれが確認されたため、先端と基部で伸長スピードを変えるモデルの改変を行い、実際に見られる分枝の非対称性を再現した。 さらに、形態に影響を与える外部条件(重力・pH)を検討するために、ローテーターを用いた微小重力下での栽培や寒天培地のpHを変化させてニューベキアの飼育を行い、形態の比較を行ったが、ニューベキアの葉の形態はこれらの外部条件には大きな影響を受けないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な発生条件・段階におけるニューベキアの葉原基の形態の比較を行ったが、複葉における突起形成は同調性に乏しいため、予定していた突起間の等間隔性についての解析は困難だった。しかし、モデリングの結果予想された分枝パターンに着目し、シミュレーションと実際の葉原基での比較を行い、より現実に即したモデルへの改変を行った。さらに、ニューベキアが示す葉の多様性を生み出す原因について、仮説を立てた。ただ、pHなどニューベキアの表現型に影響を与える外部条件の検討を行ったが、顕著な影響は見られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
温度変化という外乱にともなってニューベキアが示した葉の多様性について、モデルに基づく仮説を立てたのでこれを実験的に検証していく予定である。また、モデリングの結果形態形成過程における葉原基の伸長領域が、複葉の分枝パターンに深く関わっていることが示唆されたため、分裂パターンの可視化や標識実験を行って伸長領域を特定する予定である。さらに、低分子を中心とした環境の変化に伴う表現型への影響に関しては結果が得られていないが、反応拡散システムのチューリングパターンと、オーキシンの極性輸送モデル(植物のモデリングにおいて一般的)に基づくパターンとの比較を行うことで、モデルの分子的実体に迫って行きたい。
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Research Products
(2 results)